終焉之唄
□邪乱無導
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愚かな者共よ。乱れ狂って堕ちるがいい。
常夜の闇を這い回れ。
邪乱無導
古びた教会から微かに流れるパイプオルガンの音。重々しく響くその音色は、この世の終りを告げるかのように深く、静かに、世界を支配していた。
「羽夜」
ひとつの声が不協和音を止めた。壊れかけの扉を開け中に入ってきたのは一人の少年。
「……聖紫か。何の用じゃ?」
鍵盤から指を離し、羽夜と呼ばれたシスターは顔を上げた。その声は女性よりも低く、長い白髪から覗く顔立ちは中性的な造りをしていた。
「頼みがあってな」
そう言う聖紫の側へ、黒の法衣を妖しく揺らしながら近付いていく。年不相応な姿をした彼の前に立ち、口元だけに笑みを浮かべた。
まだ外は明るいというのに室内は薄暗い。紅い唇だけが宙に浮かびあがっているようだった。
「幼子を二、三人譲ってはくれぬか」
その言葉を予想していたのであろう羽夜は、一層深く笑みを貼りつかせる。
「ふふ……また、殺すのか」
まるで言葉遊びを楽しむかのような声色で、羽夜は聖紫の肩にそっと手を触れた。
身長差を埋めるように羽夜は傍らに屈み、聖紫の耳元で呟いた。
「わらわの楽しみを奪うでない」
甘い、香水の香りが鼻につく。お互いの心理を探っているのだろうか。姿勢を崩さないまま、二人は見つめ合う。その瞳は、敵意、同情、哀れみ、愛情、狂気、様々な感情に満ち溢れていた。
生でも、死でもない。世界の終焉に望むものは、混沌――