バッドエンド

□―*3*―
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 ハルキを先頭に、一行は森の中を進んでいた。
 複雑そうに表情を歪めながら枝から枝へと器用に飛び移っていくハルキ。その後から邪魔な枝葉を掻き分けながら歩くヴィックス。少し後ろにはマイペースに歩くミスト、更に後ろでは不安いっぱいといった顔で時折小声で話しながらついてくるアレックス、シオン、レオン。

「ここら辺で待ち伏せしましょっか」

 木から降りたハルキが、比較的太い木々と数人隠れるには充分な茂みが密集した場所に腰を下ろした。
 数メートル先には、整備こそされていないが馬車が通れるだけの空間が横に伸びている。他に道らしい道はなかった。おそらく獲物もここを通るだろう。
 追いついたヴィックス達も同じように腰を下ろした。もちろんすぐに戦闘態勢に入れるよう細心の注意を払ってだが。

「そういやまだ名前聞いてなかったな」

 全員が身を潜めたのを確認すると、思いついたようにヴィックスが口を開いた。手を貸せとは言ったものの、大切なことを聞き忘れていたことに気付いた。

「……まずは先に名乗るのが礼儀じゃないのか」

 隣で片膝を立てて待機しているミストは目線も合わせずに言い捨てた。

「礼儀の欠片もない奴がよく言うよ。俺はヴィックス、んでこっちからハルキ、アレックス、シオン、レオンだ」

 隠れるように自分の後ろに座っていた子分達を順に親指で指していく。彼らは引きつった笑顔をミストに向けていた。当の本人はそれを興味のなさそうに一瞥し、仕方なく口を開く。

「ミストだ。初めに言っておく。気安く呼ぶな」

 極めて簡潔に、要点だけを述べた。どこからか漂ってくる威圧感に、ヴィックスを除いた全員が生唾を飲み込んだ。
 彼に逆らったら命の危険に晒されるかもしれない。決して大げさなどではない、そんな考えが頭の中を支配していた。
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