バッドエンド
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風が木々を揺らす音に紛れて聞こえてくる金属音。ヴィックスは隊長格の男と交えていた剣を突き飛ばして間合いをとった。
「あんまり大したことねえなあ」
挑発するように笑いながら、剣を構え直す。それを振り回す度に聞こえる風を切る音が全く隙を感じさせなかった。
「遊ぶな。時間の無駄だ」
その脇をミストがすり抜けて、兵士達とは一定の距離を保ったまま周辺に火の粉を撒き散らす。何が起こったのか一瞬理解できなかったのだろう。兵士達は驚いた顔で頭を庇いながら怯んだ。
「おいおいおい、だからお前はー」
その様子を見ながらヴィックスが再びため息をついた。すぐに消えてしまうことが実証されている為か、やはり呆れてはいるが焦ってはいない。
「く……っ、魔術師、か」
それとは対照的に、兵士達は未だ怯んだまま絶望に近い声をあげた。
決して魔術師が珍しいわけではない。護衛を務める者であれば、あるいはそれを抱える主君であれば、接する機会も多々あるだろう。だが、決して日常の中で容易く出会える存在でもない。
いくら修業を積もうとも、才のない者には備わることのない人知を超えた天性的な力。敵に回せば苦戦を強いられること間違ないだろう。
「数ではこちらが有利、恐れるな!」
血の気の多そうな兵士が一人、叫んだ。