姫さまを捜せ!

□第8話
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「姫さま!」
「やだ、あなた達、どうしてここが分かったの?」

 窓以外は何もない部屋の隅に並んで座っていた二人の人影は、捜し求めていた姫君、メルシィとその駆け落ち相手と思われる男だった。

「アスカ、逃げましょう!」
「あ、ああ」

 メルシィは立ち上がり、アスカの手を引いた。

「おっと、そうはいきませんよ、姫さま。おとなしく帰りましょう」

 いつの間にかリュウイが背後に周り、窓から脱出しようと考えた二人の行く手を阻んだ。

「うっ……。わ、私はっ、今度こそは本気よ? 本当にアスカを愛しているの!」

 メルシィはアスカの手をしっかりと握り、目の前に立つリュウイを見上げた。

「姫さま……」

 その切なげな表情を見て、シュンは胸が痛んだ。
 こんなにもお互いを想っている二人を引き離して良いのだろうかと。

「……でもそのセリフ何度も聞いてるしなぁ」

 感慨に浸っているシュンを尻目にソルが呟く。

「へ?」
「だから、言ったろ? 毎回同じパターンなんだって。『本当に愛してる』だとか『一緒にいるとおかしくなりそう』だとか、姫さまの口説き文句だもんな」
「ちょ、ちょっとソル!」

 爽やかな笑顔で言うソルを、メルシィは真っ赤な顔で睨み付けた。
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