バッドエンド

□―*3*―
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「お、もしかしてあれか?」

 脅える子分達を余所に、ヴィックスが声を潜めつつ、身を乗り出して道の先を見た。風が葉を揺らす音に混じって馬の蹄や馬車の車輪の音、人の声も聞こえてくる。
 見つからぬよう、ヴィックスと同じようにして全員が音のする方に視線を向けた。
 そこには、大人が三、四人乗れる程度の小さな馬車が走っていた。形は小さいが、細やかな装飾には様々な宝石が散りばめられている。

「母上、少し休憩致しませんか? おなかの子もきっと疲れていますよ」
「ふふ、そうね、そうしましょうか。馬車に揺られるのも飽きてしまったしね」

 御者が毛並みの整った馬を止め馬車の扉を開けると、中からまだ幼いが歳より大分大人びた印象を与える少年と妊婦と思われる女性が姿を現した。
 後に続いて降りる執事やメイド、馬に跨り彼らを守るように取り囲んでいる十数人の兵士達。その様子からこの二人が高い身分の人間であることは簡単に予想がついた。

「この森を抜ければすぐに着くわ。きちんとおじいさまにご挨拶するのよ?」
「もちろんです! 僕はもうすぐ兄になるんですからね。もう子どもじゃないんです」

 胸を張って言う少年に、周りの者も思わず笑みを浮かべる。和やかな空気がそこにはあった。
 会話の内容からすると、出産を控えた母親の里帰りといったところだろうか。
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