バッドエンド

□―*6*―
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 湿った土に足を取られぬよう、最善の注意を払いながらも全力で駆け抜ける。

「うぎゃっ」

 その矢先、隣を走っていたはずのアレックスの姿が短い悲鳴と共に消えた。視線を下に移すと、見事にぬかるみに填まって転んでいた。

「うわ馬鹿、お前また……何やってんだよ!」
「だ、だってハルキさんが無理矢理引っ張るものですから……」

 慌ててそれを起こそうと少し姿勢を低くしたハルキと、その腕に縋って立ち上がろうとしていたアレックスに重なる影。

「やべ……」

 動くこともできず、今にも振り下ろされそうな剣を見つめたまま二人は力が抜けたようにその場に崩れ落ちた。

「邪魔だ。どけ」

 どうすることもできずに硬直していると、新たな影が二人に重なった。

「ミ、ミストさん!」

 風に揺れる藤色の長髪を見上げ、ハルキとアレックスは手を合わせて叫んだ。

「俺達を庇ってくれるんスか!」
「実は良い人だったんですか!?」

 あれほど敬遠していたのにも関わらず、互いに手を取り合い歓喜に瞳を輝かせている。

 対照的に兵士達は突如現れた存在に一瞬動きを止めた。ミストはその一瞬を見逃さず、再び武器を落とそうと兵士の腕を蹴る。

「く……っ」

 攻撃をかわせなかった兵士が小さく呻いた。攻撃を受けつつも辛うじて剣を弾き飛ばされることは防いだが、その反動で僅かに彼から間合いを取られてしまった。

 剣を振るには遠い、しかし魔術を放つには好都合な間合いを。
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