10/14の日記

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小僧の寿し/勝田文
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食べものにまつわる4つのお話と、チャールズ・ディケンズ原作の『クリスマスキャロル』を勝田流に漫画化した傑作が収録された一冊。


握り寿司、おでん、スイカ、鴨。4つのお話にそれぞれ登場する食べものがいちいちおいしそうでお腹が空きます(笑)
どのお話も可愛くて、ちょっぴり切なかったりするけれど、最後にはほっこりできる良作揃いで。
『ととせの鴨』のととせってなんぞや? と首を傾げていたのですが、あ、そうか、10年だから、ひととせならぬととせなのか、とあとで気付きました。

最後に収められた『クリスマスキャロル』はぜひ読んでいただきたい!
勝田さんの手にかかると、こんなにキュートで切なく、優しさに満ちあふれた物語になるんですね。

偏屈で人間嫌いの老人、エビニーザ・スクルージ。
クリスマスなどくだらんと、世のなかの浮かれた連中を馬鹿にしていた彼のもとに、7年前に亡くなった友人で共同経営者のジェイコブ・マーレイの幽霊が現れる。
変わり果てた亡き友の姿に恐れをなして腰を抜かすスクルージに、マーレイは自身の人生を悔いていることを告げ、スクルージに同じ道を歩まないよう忠告するとともに、彼のために希望と機会を与えに来たのだと説明する。
そうしてこのクリスマスイブの夜、半信半疑のスクルージのもとに、マーレイが告げたとおり、第一の幽霊がやってくるのだが……。

頑固で偏屈じじい(失礼!)のスクルージの表情が、第一、第二の幽霊にともなわれて時を渡るうちにだんだん頼りないものになっていき、悲しみを目の当たりにした人間の表情へと変わっていくさまが丁寧に描かれています。
そして第三の幽霊によって未来を垣間見たスクルージの絶望たるや。

わたしは『Daddy Long Legs』ではじめて勝田文さんを知ったのですが、この日本版あしながおじさんにすっかりやられてしまいました。
今回の『クリスマスキャロル』も傑作です。
おすすめの一冊です。



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