八犬伝同人

□狼さんに気を付けて
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幾分寒さが緩んだ、ある冬の午後。




憲兵隊長・犬飼現八はひとり見回りの任務を離れ、古い教会の前に佇んでいた。
近くの木に馬を繋ぐと、ゆっくりとした足取りで建物へと向かう。



…と、彼はそのこどもに気付いた。



大きな木の下にうずくまるようにして、小さな女の子がしゃがんでいる。
少女は不思議そうな顔をして、現八のほうを見ていた。



現八は一度立ち止まり、方向転換をしてそちらへ向かう。
教会にいるということは、この子も、信乃が読み書きを教えているというこどもたちのうちのひとりなのだろう。



「信乃はいるか?」



尋ねると、少女は彼を見上げてゆるゆると首を振る。



「信乃せんせいは、まだこない」



あどけない声でそうこたえる。
接近してようやく気付いた。この子は目が見えないらしい、ということに。





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