BLSS
□悪い虫にはご用心
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「悠斗、朝だよ」
布団からはみ出した頭を撫でられておれはもぞもぞと身じろぎをする。さらに奥にもぐり込もうとすると無情にも布団を引っぺがされた。
「わっ」
「目が覚めた?」
笑いを含んだ声がすぐ傍で囁く。ぬくぬくとした布団を剥ぎ取られたおれはシーツの上で膝を抱えてまるくなりながらうらめしく父親を見あげた。すると、間近に迫っていた顔がさらに近付いて唇を塞がれる。
「ん……」
ついばむように触れたあと、閉じたままの歯を舌先で突かれておれは口を開いた。戯れるように絡みついてくるそれに応えるうちに頭と身体が起きてくる。まるくなったままもぞもぞと膝を擦りあわせていると、ふいに下腹部を撫でられてびくんと震えた。
「んん、はぅ……っ」
キスをしながら父親はふっと笑った。きっとあの悪そうな顔をしているに違いない。朝から元気いっぱいのものをぐりぐりといじられて身をよじると、冷たい手が下着のなかに滑り込んできた。
「んうっ!」
その冷たさと急に握り込まれた感触に身体が跳ねる。
「ふ……、悠斗、可愛い」
おれのものはすでに先端からあふれ出したもので濡れていたらしく、それを塗り込めるようにして父親は指先を絡めてくる。たまらずに、おれは自分から父親の肩に腕をまわしてキスをねだった。
「あ……っん、おと……さ……」
ベッドに横たわったまま、父親の身体を引き寄せて唇にかぶりつく。父親はベッドに膝をついておれに覆いかぶさりながら手を動かし続ける。
おはようのキスをして、気まぐれに悪戯を仕掛けられて。寝起きはとくに快楽に弱いことを熟知している父親はいつも以上に意地悪くおれを焦らす。緩やかな刺激がもの足りなくて父親の手にそれを擦りつけるようにして腰を揺らすと、宥めるようにやわやわと唇を食まれた。
「む……ぅ、ん」
「そのまま腰を振ってごらん」
「や……」
「いや? やめようか?」
「……や、」
泣きそうになりながらふるふると頭を振る。潤んだおれの目を覗き込みながら暗示をかけるように父親が囁いた。
「じゃあ、やってごらん」
「…………っ、」
恥ずかしい行為をうながされて顔が赤くなるのが自分でもわかる。だけどこのまま途中で投げ出されてはたまらない。おれは父親にしがみついて腰を揺すりはじめた。
「あ……っん……っ」
これではまるで、父親の手を使って自慰をしているようなものだ。恥ずかしくて仕方ないのに、おれの身体は素直に興奮をあらわにして父親のてのひらを汚していく。腰を浮かした隙にズボンと下着をずりおろされ、いやらしく反応しきった下半身が剥き出しになる。
おれの顔をじっと見つめながら、甘い声で父親が囁いた。
「感じてる悠斗の顔、すごく可愛い」
「……っや、」
恥ずかしい表情を見られないように、覆いかぶさっている父親の肩に額を押しつけて顔を隠す。そうしながらも、快楽を追い求める腰の動きは止まらない。ふっと笑う父親の吐息がおれの髪をくすぐる。
「さっきから、いやいやばっかりいっているよ。お父さんは悠斗が嫌がることはしたくないな」
あやすように髪に口づけられて、父親の背中にぎゅっとしがみつきながらおれは必死に訴える。
「……っや、じゃ、なぃ」
「うん?」
優しく先をうながされて、おれは蚊の鳴くような声でいった。
「…………い、」
「聞こえないよ」
「……ぃっ……気持ちい……っ」
とたんに先端をぐりぐりといじられて身体の奥から熱が噴きあげてきた。父親は先っぽを擦りながら器用な手つきで全体を扱きあげる。
「あっだめっ……や、ああぁッ」
あっというまにのぼりつめておれは父親の手のなかに精を放った。出し切ったあとも、父親はそれをなすりつけるようにしてゆるゆると刺激を与えてくる。いったばかりで敏感になった身体がびくびくと痙攣した。
「あ……ぁ……」
力が抜けてシーツに沈み込むと唇を塞がれた。とろけるような余韻に浸りながらキスを貪る。このまま本格的な行為になだれ込んでもおかしくない雰囲気だったけれど、父親はあっさりと身体を離した。