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□お父さんの隣
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高校に入学してから二週間が過ぎた。
中学校には自転車で通っていたけれど、高校は電車通学で、偶然にも父親と同じ駅で降りるため、この四月からは毎朝父親と一緒に家を出るようになった。もはや乗りものとは思えないような鮨詰め状態の電車内はもちろんのこと、少し大きめの真新しい制服や高校生になってはじめて履いた革靴にもまだ慣れない。
「悠斗、学校はどう? 新しい友達はできた?」
金曜日の夜。父親手製の鶏肉のソテーと春野菜のサラダを味わっていると、向かいに座った父親が、柔らかな肉にナイフを沈めながら尋ねた。切り開かれた断面からじゅわっと肉汁があふれてソースと絡み合う。
「ん……、まだわかんない」
おれは社交的な性格じゃない。この歳になってもまだ人見知りをするし、知らない相手と話すのはかなり緊張する。顔にはあまり出ないみたいだけど。
今のクラスの雰囲気は悪くないかんじだった。卒業までの三年間、クラス替えのない高校なので、なるべく目立たず穏便に過ごしたいと思う。そんなことを考えているうちに食事の手が止まっていた。
「悠斗?」
父親の声にはっとする。顔をあげると、父親も手を止めておれを見つめていた。目が合うとふっと表情を和らげて父親はいう。
「なにか心配なことや不安に思うことがあったら、ちゃんとお父さんにいうんだよ。いいね」
「ん」
こくりとうなずくおれに、父親は満足げな笑みを浮かべる。
「ひさしぶりに、明日はふたりで出かけようか。一緒にランチを食べて、そうだな、少し足をのばして美術館に行こうか。どうかな、悠斗」
父親の誘いに、おれはちょっと目を見開いてから、さっきよりも力強くこくこくとうなずく。
「行く」
「じゃあ、今夜はあまり激しいことはしないでおこうね」
「え」
きょとんとして首を傾げたおれは、笑みを浮かべた父親の眼差しに妖しい光が宿るのを見て思わず赤面した。父親がなんのことをいっているのか理解したのだ。
「な、なに……っ」
真っ赤になって口をぱくぱくさせるおれを、妙に艶っぽい表情で見つめて父親は笑った。
「悠斗は可愛いな」
♣♣♣
ゆっくりと規則的に頭を撫でるような感触におれは目を覚ました。
「おはよう」
「……おはよ」
すぐ隣に父親がいて、おれの髪を撫でている。心地好くてそのまま眠ってしまいそうになるけれど、唇を塞がれ、やわやわと甘く噛みつかれて目を開けた。
「……っん、あ」
舌を絡めとられてねっとりと舐められる。それだけでもうぞくりとして、寝起きですっかり勃ちあがった下腹部がさらに疼き出す。
昨夜、あんなに出したばかりなのに。そう思うと羞恥のあまり全身がかっと熱くなる。布団のなかで腰を引き気味にしながらもぞもぞするおれに気付いて、父親は唇を離すと悪そうな笑みを浮かべる。
「どうしたの」
わかっているくせにわざと素知らぬ顔で聞いてくる父親を睨みながら、パジャマのズボンの前を押さえる。毎朝のことなので、しばらく放置すれば治まるとわかっているけれど。それに、父親だって同じ男なんだから恥ずかしがる必要なんかないとも思うけれど。
うつむいてもじもじしていると、ふいに父親がおれの手の上からその場所を掴んだ。