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□つむじまがりの恋
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無遠慮にドアが開き、次いで照明が灯され、真っ暗だった部屋が眩しい光に照らし出される。
「いいかげん、機嫌直せよ」
ぶっきらぼうにそういう声に背を向けて、おれはかたくなにベッドの上で膝を抱えてうずくまる。
本当はわかっている。正宗は悪くない。おれが勝手にふて腐れているだけだ。でも、頭ではわかっていても感情がついていかない。
はあ、というため息を残して、背後でドアが閉まる音がした。
しんと静まり返る寝室。
なにをいっても耳を貸さないおれに呆れ果てて、正宗は匙を投げたのだろう。無理もない。仕事から帰ってきて、ゆっくりしたいだろうに、些細なことがきっかけでおれが不機嫌になり、一方的に正宗を拒絶して寝室に閉じこもった。
正宗にしてみれば、まったくいい迷惑だ。ぐす、と鼻をすすった瞬間。
肩を掴まれ、ベッドに仰向けに押し倒された。
「なっ」
なんの気配もなかったから、まさかまだ正宗がいるとは思いもせず、おれは抵抗する隙もなくあっさりと組み伏せられてしまう。
ずっとうつむいていたせいで明かりに目が慣れていない。おまけに、逆光のせいで、覆いかぶさっている正宗の顔がよく見えない。状況が飲み込めず、せわしなく瞬きを繰り返していると、顎を掴まれ口を塞がれた。
「……っん、んんッ」
歯の隙間をこじ開けて滑り込んできた舌が、おれの口のなかを乱暴に掻きまわす。突然のことで、苦しくて思わず舌に噛みつこうとすると、今度は頭を掴まれ、顎を突き出してのけ反るような体勢でシーツに押さえつけられる。そうすると、噛みつこうにも顎に力が入らない。
「は……っ、ふ、う……」
重力に従って流し込まれる唾液をごくりと飲み込む。頭をのけ反らせているせいで喉が苦しい。手足をばたつかせて暴れるおれを、正宗は自分の体重をかけて押さえ込み、手加減なしに貪り続ける。まるで、鋭い爪で獲物を地に縫いつけ、がつがつと牙を立てる肉食獣みたいに。
息をするのもままならず、否応なしに、おれの抵抗する力が弱まったのを見計らったように、ようやく正宗は口を離した。
「っぁ、はぁ、は……」
そうして、目を瞑ったまま必死で酸素を吸い込むおれの服をまくりあげる。冷たい空気に素肌を晒されて一気に鳥肌が立つ。
「ちょっ、まさむね、なに」
「黙ってろ」
そっけなくいい放つと、正宗はおれの頭から無造作に服を引き抜く。苦しい。裏返しになった服が腕のところでひっかかり、団子になる。そのまま、間抜けな万歳をするような格好で放置された。
じたばたともがくおれに、冷ややかな声が降ってくる。
「暴れるな。縛るぞ」
目を見開くおれの上で、小気味のいい音を立てて襟元からネクタイを抜くと、正宗はおれの両手首を手際よく戒めた。痛くはないが緩くもない。ネクタイと絡まった服、両方に身動きを封じられて自由がきかない。
「ほどけよっ」
「口も塞ぐか?」
今の正宗ならやりかねない。言葉をなくして唇をわななかせるおれの下腹部に、正宗の手が伸びてくる。ベルトを外し、ジーンズの前をくつろげると下着ごとずり下げる。
「や、やめろよバカッ」
明かりの下で下半身を剥かれて、恥ずかしいところがあらわになる。そこに注がれる正宗の視線を感じて、羞恥のあまり頭に血がのぼる。顔から火が出そうなほど熱い。
ふいに、剥き出しにされたものを冷たい手で握られて腰が浮く。
「ひっ……つめた、っああ」
そのままいくぶん乱暴に擦られて、本能的な恐怖に身が竦む。正宗は手を動かしながらおれにのしかかり、首筋に噛みついた。
「いっ、た……、あっ」
歯を立てられたと思ったらねっとりと舐められ、皮膚を強く吸われる。チクリとした痛みが走り、痕を付けられたのだとわかる。ひとつだけじゃない。優しくない手つきでおれの敏感なところを刺激しながら、正宗は唇を滑らせて全身に甘い痛みを刻んでいく。
「やめ……ああ、あ……っ」
胸の突起をゆっくりと舌先で転がされ、じんと痺れるような感覚が生まれる。同時に、正宗の手のなかにとらわれたものの先端をぐりぐりといじられて身体が跳ねる。
「ひぁっ」
そうして散々、胸と下半身をなぶったあと、正宗は無言のまま下へ下へと頭を移動させ、充血したおれのものに食らいついた。
「――――ッ、」
舐める、ではなくしゃぶるという表現がぴったりなやりかたで、正宗はおれをいたぶり続ける。
「あっ、あっ、や、やだ……ッ」
瀕死の昆虫みたいに手足をびくびく震わせながら、おれはなすすべもなく貪られ、絶頂へと追いあげられた。