10/06の日記

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もう書けません!中年新人作家・時田風音の受難/沢木まひろ
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時田風音。女のような名前だが、もういい歳をした男である。
不本意な揉め事に巻き込まれてあっさりと仕事を辞め、以来、家族のお情けで実家の離れに住み着き、日々のアルバイトで糊口を凌ぐフリーターの彼が、賞金目当てに応募した〈女性のための官能小説〉で賞をとり、作家への道を歩みはじめ……と思いきや、本人はまるでその気がなく。
そんな、てんでやる気のない風音の尻を叩いて発破をかけるため、担当編集者が乗り込んでくるのだが……。


『本をめぐる物語 一冊の扉』というアンソロジーに収録された短編に、続きを書き下ろしてまとめたもの。
そのアンソロジーを読んで、これがたいそう面白くて。文庫化されていると知って探していたのですが、近隣の書店ではダ・ヴィンチ文庫を扱っていなかったり、あったとしてもほんの数冊という悲しい状況で。
ようやく見付けましたよ!

主人公の風音のほか、担当編集者の百山、風音の姉ふたりと妹、そして百山の旦那で文芸誌編集長の坂瀬、それぞれの視点のお話が展開されていて面白く読みました。

もう書けない、無理!と弱音を吐きまくりの風音のダメっぷりに対して、童顔ながらも豊満なバストの持ち主である百山が一歩も引かずにビシバシと尻を叩きまくり、最終的には恐れをなして縮みあがった風音が許しを請い、あわてて机に向かう描写が笑えます。
この風音の人柄が憎めなくて良いのですよ。ただのヘタレかと思いきや、家族思いでとくに妹には優しく、自身の飼い猫であるホタルにはもうメロメロ。ホタルを養うために賞金目当てで賞に応募したというくらい。

一気に読めるお仕事小説です。



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