10/16の日記

02:58
さみしいひと/斎藤けん
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同僚のミスを庇って会社をクビになった倫子。
その帰り道、通りかかった公園で泣いている女性を見付けて思わず声をかける。彼女は、ピアニストを志す弟の自由と引き換えに、親の決めた相手と結婚することになったのだという。それにともない、日本を離れることになった彼女の代わりに、残された弟の世話を倫子が引き受けることになるのだが……。


倫子と諒、二組の母と子の確執というか母親からの執着、束縛をテーマにしたシリアスなお話。
母ひとり子ひとりで暮らす倫子の母親は、娘をうしなうことを恐れるあまり過剰な束縛を倫子に強いていて。娘の倫子は、母親を悲しませたくないという一心でそれを受け入れていて。端から見るとものすごく息苦しい家族。

一方、諒の家では、弟を大事に思い、彼がピアニストになることを全力で支援してきた仲の良い姉とは対照的に、母親は諒が家業を継ぐものと決めつけていて。ピアニストになるなど言語道断、そんなものは子どものお稽古ごとだと、いっさい聞く耳を持たず。
見た目はおっとりした上品そうな母親なのに、子どもたちの言葉をまったく理解しようとしないところが怖い。

倫子がすごく良い子なんですよね。泣いている人を放っておけず、同僚のミスをかぶってクビになったり、見知らぬ女性(諒の姉の礼華)からのいきなりで無茶なお願いを聞き入れたり。
それは実は、倫子自身が子どものときに、泣いても誰も助けてくれなかった経験からきているもので。自分に救いの手が差し伸べられることはなかったけれど、ほかの誰かの力になれたら、と考えられるところがすごい。

諒は、異様な母親から自分を守るために姉とふたりきりで支え合って生きてきたため、姉にベッタリで他人には心を開かない。そんな彼の世話を引き受けた倫子は悪戦苦闘の連続で。
自身の母親からの干渉と諒の拒絶に耐えながらも懸命に力を尽くすうち、仕事だからという意識ではなく、自分の意思で諒を守りたいと思うようになって。


親からの自立。
子どもからの自立。
スムースにいく家庭もあれば、さまざまな事情から、そう簡単にはいかない家庭もあり。
個人的に、女親との関係はめんどくさいなという思いがあります。


巻末のおまけ漫画が最高です。本編がシリアスなだけに、この破壊力ときたら(笑)



☆☆☆



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