お宝部屋

□相互記念小説
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〜風丸Side〜



「鬼道!サッカーやろうぜ!」

「聞いてくれないか鬼道、最近夕香が冷たいんだ」

「だああっお前ら、オレが今何をしているのか言ってみろ!」

「「部誌を書いてる」」

「分かっているなら出てけーーーっ」

今日もまた、円堂と豪炎寺は鬼道に部室から蹴り出されている。毎回毎回懲りない奴らだ、とは思うけど。

「愛されてるよなぁ、鬼道」

「勘弁してくれないか、風丸」

心底疲れた、と言いたげな顔で鬼道はため息をつく。そんな様子を見て、なんだか楽しいなぁと笑うと、ゴーグルに隠された瞳を光らせる鬼道。

「なにがおかしい……」

「いやぁ楽しいから」

「こっちは楽しくないんだぞ」

円堂はキャプテンのくせに部誌を一度も書いたことがない、だからオレが書いているのにアイツらはそんなオレの苦労も知らないで纏わり付いてくる……と、オレに愚痴を零す、天才ゲームメイカー。たまにはこんな彼も、悪くはないかな。

「円堂も豪炎寺も、お前が大好きなんだよ」

「ははは……だったらその気力をあるだけ試合に回してくれ……」

部誌を書き終えたのか鬼道はシャーペンを筆箱にしまい、鞄を持つ。それについてオレも外に出るともう辺りは暗くなっていた。

「あれっ、もう春だっていうのにまだ少し冷えるな」

「…オレはあの二人のせいでいつも暑苦しいからこれぐらいが調度いい」

「ふふ、いつも楽しそうだな」

「二度言わせるな、こっちは楽しくない」

そんなことを言いながらも、それほど嫌な表情は読み取れないんだけど、なぁんて言ったらお前は顔を赤くして走って行っちゃうかな。想像したら笑いそうになったから、一人でそれを堪えていると鬼道は語った。

「…好かれているのは確かに、嫌われているより良いぞ、認める。だが」

「?」

「オレが帰るより先にオレの家に居座っているのはどうなんだ」

「……そ、そんなことしてんの!?あいつらは…」

鬼道からすれば迷惑千万かもしれないけれど、端から聞いていれば爆笑もの。きっとあの二人のことだから、さも当たり前のように寛いでいるんだろうな。面白いから今日は鬼道の家に邪魔しに行こう。うん。

「お前そんなに嫌なやつだったか?」

「ははっ、マックスが移ったみたいだ」

「…マックス以上に陰険だぞ」

鬼道の家に行く前に、少し鉄塔広場に寄ることにした。特になにをするわけでもないけど、オレが何となく何かを感じ取ったから、それだけの理由で。

「………あ!」

「!」

オレってなんか能力持ってんのかも!?さっき感じ取った何かは、あいつらの、 此処で特訓してる二人の、熱い魂的な何かだったんだろう。

「円堂に、豪炎寺……」

驚きを隠せない鬼道は、ただタイヤにくらいつく熱血キャプテンと、ボールを身体の一部のように操るエースストライカーを見つめていた。

「豪炎寺ぃ、そろそろ帰るかぁ!?」

「あと三発!ファイアトルネード打ったら!」

「オッケー!」

ああ、やつらの身体はもうボロボロだろうに。だってついさっきまで厳しい練習をしてたんだから。馬鹿みたいだっていうか二人ともサッカー馬鹿だからな。それはオレも鬼道も、だけど。

「あいつら、輝いてるなぁ」

「そうだな」

「お、次で最後みたい。…オレたちも帰るか」

「ああ」

鉄塔を背に歩き出すオレたち。なんか知らないけど隣を歩く鬼道は、スキップしそうなくらい軽い足取りだった。ポーカーフェイスが上手そうで、1番分かりやすいんだから。

「頑張るあいつらを見られて嬉しいんだぁ」

「ちがうっ!」



次の日、部活が終わったとき。

「なぁ鬼道〜!みんなで缶蹴りやろうぜ!」

「聞いてくれないか鬼道、オレはドロケイのが良いと言ったんだ」

「お前らは〜〜!!」

昨日あれだけ練習していたのに元気なやつらだ、鬼道の周りでちょこまか動き回る。鬼道も大変だな。あれ、でも鬼道、結構楽しそう?

「ぬかせ!おいっ風丸っ、こいつらの相手をっ」

「聞こえません」

「ぎゃああああ裏切り者!」

「鬼道、ほらっ」

「ドロケイ!」

「だぁぁぁ!」

ああ、平和な日常だ。
鬼道は、円堂と豪炎寺に纏わり付かれ、二人は邪険にされても諦めずにちょっかいを出す。…愛ゆえに!

そして今日もまた、熱血キャプテンとエースストライカーは、天才ゲームメイカーに、部室から蹴り出されるのである。



END



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