お宝部屋

□甘い味
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陽が傾き空がそろそろ夜を迎えようとしている頃、彼・円堂守は鉄塔広場で一人練習をしていた。
そんな時、一人の男がやってきた。

「また此処で練習していたのか」

「鬼道!お前も一緒にするか?」

「いや、俺は遠慮しておく。
それにしても円堂は本当にサッカーが好きだな。
練習の後だというのに此処でこうして練習を続けて…明日は久しぶりの休みなのだからたまには休息を取るのだぞ?」

「あれ?明日って休みだった?」

「そうだ、キャプテンのお前が知らなくてどうする」

鬼道は呆れたのか、大きなため息をついた。
円堂は鬼道の言葉を聞いていたのか返ってきた返事は…

「鬼道!明日暇かっ?」

「お前な、俺の話を聞いていたのか?
もし仮に俺が暇だとしてもお前は休めと…」

まだ何か言いたかっただろうがそんな事を気にせずに円堂は鬼道の言葉を遮った。

「俺は鬼道と一緒に居たいんだよ。
折角の休みなんだ、鬼道と一緒にゆっくりしたいんだよ」

それともお前は俺と一緒に居たくない?と円堂は付け足しながら鬼道に近づいてきた。

鬼道は若干後退したが直ぐに微笑んだ。

「鬼道、俺はお前が好きだ。
この感情は収まらない」

「俺も円堂が好きだ」

でなければこうしてお前を心配し此処まで足を運んだりしないと、心中で思った。

「お前には負けたよ」

鬼道はそう言いながら溜め息をつきながら微笑んだ。

「そうこなくっちゃ!
明日は俺の家に来いよ」

「円堂の家か。
いつもは俺の家だからな」

たまには良いかもしれないなと鬼道は続けた。
円堂はその返事が嬉しかったのか満足したような顔をしている。

「じゃあ明日絶対俺の家に来いよ!
待ってるからな!!」

そう言うと円堂は走って帰って行ってしまった。

「あっ、ちょっと待てっ!
円堂ーっ!!」

何かを思い出したのか鬼道が円堂を追いかけながら叫んだ。

「ん?どうしたんだ、鬼道?」

どうしたものかと一瞬吃驚しながら円堂は振り返った。

「っはぁ、はぁ…何時に行けば良いんだ?」

「え・・・?」

たったそれだけのために自分の元へと走って来てくれたことが嬉しかったみたいだった。

「うぅーん…」

むぅーっと円堂は考える仕草をして暫く静止していた。
そして突然ぽんと掌の上を叩いた。
円堂は白い歯をニッとむき出して笑った。

「じゃあ、鬼道が来たい時間に来てくれ!」

「なっ…ちょっと待てっ…」

「じゃっ、明日待ってるからなぁーっ!!」

円堂は鬼道の言葉を待たずに先に帰って行ってしまった。

鬼道はハァと溜息をつきながら円堂の後姿をずっと見つめていた。
そしてすぐに微笑んだ。

その後鬼道は家に帰った後何時に行けば丁度良いかを必死に考えていたのであった。
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