MAIN2[虎伏宿etc現在の話]

□PERFUME OF VIOLENCE
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 最初にソレが現れたのは、高専校舎の外にある簡素なトイレの中だった。

 2年生以上が任務や実習で出払い、久し振りに1年3人と五条とで屋外での体術修行をしていた、ある日の午後。突然“もよおした”虎杖が五条の「休憩」の号令と同時にトイレに駆け込んだ直後、その声は校庭いっぱいに響き渡った。

「ぎょえぇぇぇぇぇ〜〜〜ッッッ!!!!!」

 聞き慣れぬ、いや声にはかなり聞き覚えがあるが、普段の虎杖ならば決してあげぬような叫び声に、その場にいた3人は急いでトイレに駆けつけた。男子トイレの2つある個室、その手前から虎杖が転げるように飛び出してきた。

「どうしたの、悠仁」
「何があった」
「ちょっとぉ〜、うるさいわよッ」
五条、伏黒、釘崎それぞれの反応は耳に届いたのか否か?虎杖は彼らを全く見ようともせず、個室の奥に目を向けたままそちらを指差した。

「ど・・・ドドド・・・どく・・・!!」
 言葉にならない虎杖を押し退け、3人が覗いたそこには・・・

 明らかに人の頭と思しき骸骨が、便器のフチの奥にちょこんと鎮座なさっていたのだった。

「器用に乗ってるねぇ」
 呑気な五条とは反対に、虎杖の動揺はまだ治らず。
「ど、ど、ど、どうしようッ!?俺、あそこに座っちゃった!!」
「はぁ?」
「だって、座ろうとしたら尻に固いもんがペタッとッッッ」

 座ったんかい・・・伏黒と釘崎は骸骨出現の衝撃よりもそちらの方がよっぽど驚きだった。虎杖が尻を出したままじゃ無かったのは、呪術師としてのプライドか、それともただの反射行動か。

「ま、あれは悪いもんじゃないから、放っといていいよ」
 祓っても祓ってもまた湧いて出てくるしねぇ〜、とは五条の弁。なんでも、五条がまだここの生徒だった時分からアレは現れては消え、現れては消えを繰り返し、何度か除霊を試みたもののまだ誰も成功したことが無いのだとか。
「え、あれ、呪いとかじゃないの?」
虎杖の疑問に、五条は間延びした声で返す。
「呪いと言えば呪いなんだろうけどねぇ。実害がある訳じゃ無いし。そもそも誰にも祓えないし」
実害はあったよ!今、まさに!!そう叫びたい虎杖ではあったが、五条に訴えたところでどうせどこ吹く風。ここは自分が大人になって?グッと飲み込むことにした。

「ところでアンタ、トイレはいいの?」
 釘崎の言葉にハッとし、改めて奥の個室に駆け込む虎杖。そして骸骨は、虎杖と五条の会話を聞き流しつつジッと眺めていた伏黒の目の前で、下からゆっくり消えていったのであった。

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