MAIN[学生夏五中心]

□ロマンティスト狂い咲き
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 今年の夏は暑い。ゴールデンウィークの頃には、既に暑かった。“五月晴れ”だの“初夏の風”だのと聞けば普通は爽やかな過ごしやすい気候を連想するが、今年はそんなものは無かった。気が付けば熱風だった。
 梅雨が始まれば一時的に涼しくなり、日本特有のあのジメジメした鬱陶しさに襲われたが、それも今年は唐突に終わり、かと思えば、梅雨明け宣言が出された数日後にはまた長雨と灰色の雲が日本列島を覆った。うやむやのうちに宣言は撤回されたようで、その後に改めて梅雨明けが言い渡された。

 そして現在。暑い。腐る程暑い。いわゆる猛暑。酷暑。テレビでも連日、その言葉が繰り返されている。



「あぢぃ〜〜〜ッ!!!」
「言うな、虎杖。余計に暑くなる」
「あぁもうダメ!私がこんなに汗臭いなんて耐えられないッ!」
 強い日差しを避けての屋内体術訓練中、しばらく黙々と励んでいた呪術高専1年の面々が、ついに音を上げた。
「私ちょっとシャワー浴びてくるからッ!アンタ達その間に下のスーパーでアイス買ってきて!!」
同級生ふたりの返事も聞かずに、釘崎が訓練場を飛び出していく。残された虎杖と伏黒は、思わず顔を見合わせた。
「この暑い中、買いに行けってのか」
伏黒が心なしか普段より低い声で呟く。釘崎の横暴な宣言はいつものことだが、男ふたりは時々ついて行けない。女の可愛いワガママと言えば聞こえは良いが、結局毎回振り回されている。一方的過ぎるのだ。蹴飛ばされるので本人には言えないが。

「しゃ〜ねぇ、ちょっと下行ってくっか」
「行くのかよ」
「行かねぇとコワイもん」
拗ねたように唇を尖らせノロノロと腰を上げた虎杖を見上げ、伏黒も渋々と立ち上がった。

「悠仁も恵も優しいねぇ」
 そんな生徒達のやり取りを、壁にもたれながら聞いていた男がいた。彼らの担任、五条である。
「あ、五条先生。そんな訳で下まで行ってくるから、許可ちょーだい」
街の中心から離れた、静かな場所に建つ高専。寮住まいの生徒達の食事は基本的に寮の食堂で賄われているが、何しろ食べ盛りの子供達、放課後や任務の帰り等に坂を下りた先にあるスーパーで買い食いすることもある。昔から高専関係者行きつけの店だ。

「いいよ〜。じゃあ僕、ハーゲンダッツの黒みつ&きなこね〜」
「げっ。先生もかよ」
「まぁまぁ、お金出すから買ってきてよ」
「ラッキー!伏黒、行こうぜ!!」
 五条からお金を受け取ると、ふたり連れ立って訓練場を出て行く。彼らを見送りながら、五条はふと、自分の学生時代を思い浮かべた。あの頃はまだ猛暑なんて言葉はあまり聞かず、こんなには・・・・・・






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