DREAM御曹司
□なつやすみ 正剛side
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08.15追加
『なつやすみ・正剛side』
愛なんて言葉じゃ、タリナイ
お前のすべてが欲しい
俺のすべてをやるよ
家が何だっていうんだ?
そんなもんクソクラエ
だから
そんな線引き飛び越えて
コッチヘ来い
ガッチリ
受け止めてやるからさ
―――――
真新しいキャンピングカーで初めて過ごすのはお前と、って決めてたんだ。
納車されたこいつを見た途端…何だか嬉しくなってしまって、睡眠不足も厭わず彼女の元へ走らせた。ちょっと驚かせたかったし、逢えなかった時間が淋しすぎた。堪えていた。だからこうして―――。
あの後。彼女のご両親へ挨拶を済ませた。俺の知らない昔話を聞きながら夕飯を囲んだ後、半ば強引な感じで一緒に帰ろうと言ったのだ。
自分でも、その性急さに驚いている。ペースを狂わされている――否、酔っているのだ――彼女に。
海岸沿いの道を暫く走ると、松林に囲まれたひと気の無い駐車場があった。ゆっくりと停車させ、一足先に降りた俺は、助手席の彼女を横抱きにして後ろのソファーへ運ぶ。
「ね…正剛」
「ん?」
俺は、すぐ傍にある柔らかな頬を引き寄せ、軽く唇を塞ぐ。
「……っ、ちょっと、そんなことしたら喋れないよ」
「お前が…あんまり可愛いから」
「そ…そんなはっきり言われるとっ、照れるよ……あのね…」
「うん」
「さっきは、ありがとう。両親に…あんな風に言ってくれて。凄く嬉しかった」
あ……。
「……俺は本気だから」
彼女は柔らかな笑みを湛え、俺の首に抱きついて言った。
「ありがとう…」
ふわり。彼女が好んでつけるジンジャー系の香りと、柔らかな身体。ああ、帰ってきたんだなという実感が、じわじわ胸に広がっていく。今後、何があっても俺は、コイツの元を離れたくない―――離さない。泣きそうな程、苦しくて温かい存在。
「あのさ…来月最初の土曜日、空けておいてくれないか。俺の家族に会わせたい」
緩くウェーブのかかる無造作に束ねた髪が、微かに揺れる。
「……私なんかでいいの?…こんな普通の…」
「お前が、いいんだよ。お前じゃなきゃ、ダメなんだ」
「正剛…」
「流石に今すぐ結婚って訳にはいかないだろ?大学卒業して、お前がやりたいことを始めて…落ち着いた頃でも構わない。俺と一緒に生きてくれないか」
華奢な肩が震えている。俺は抱きしめる腕の力をそっと強めて、互いの鼓動が速まったのを確かめた。
「はい…」
これから先…きっと障害は続くだろう。でも俺はこの時、覚悟を決めた。
何があろうと、共に生きよう。お前の幸せの為に、俺はどんな道だって切り開いてみせる……。
流れ落ちる涙を指で拭って、俺は誓いのキスをした。