Novel・2

□挑発
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「今日は19時より会食があります。大事な会食のようですから遅れないようにと…」

碓氷は車を運転しながら美咲にスケジュールを告げるとミラーでチラリと美咲を見た。

「ああ…例の会食?昨日、叶にうるさいぐらい説明やら何やらゴチャゴチャ言われた」

ため息まじりに嫌そうに呟く。

「雅ケ丘組はウチに必要らしいですよ」

「わかってるよ…もっとしっかりしないとな…」

「十分しっかり者だと俺は思ってますけど?」

「組の皆の気持ちを引き付けて引っ張る力がまだ足りない…」

碓氷が見たミラーには窓の外を見つめるいつもより少し弱々しい美咲の横顔があった。

「俺は十分、引き付けられていますけど?」

「ま、またからかってるのか?お前はいつも私をからかって楽しんでるだろ!」

真っ赤になりながら美咲は慌てた。

「からかってないないですよ…焦ってはいるけど」

「焦ってる?お前がか?」

「焦っちゃダメですか?好きな女が他の男と婚約しそうな時に…」

碓氷は車を止めるとゆっくり振り返った。

「何言ってんだよ…だってお前あの時…」

「あの時は…組長から貴女を貰ってくれって言われた時断ったのは貴女は別の道に進む方がいいと思っていたから…でも貴女はこの道を選んでしまった」

碓氷は真っ直ぐ美咲を見つめた。

「貴女に反発する奴は俺が納得させるから貴女は啖呵切って堂々としていればいい」

「う、碓氷…?」

「だから貴女を俺に下さい。もちろん命懸けで護りますから…」

美咲は真剣な碓氷に見つめられた。

「返事は態度で貰えます?」

初めは戸惑っていた美咲だったがやがて真っ直ぐ意志の強い瞳で碓氷を見つめ返した。

「それじゃあ、その命仕方ないから貰ってやる。そのかわり、とりあえず今夜あの男に啖呵切ってやる」

美咲はグイっと碓氷のネクタイを引っ張り顔を近づけた。

「覚悟しろよ、碓氷」

美咲はニヤリと挑発するように笑うと唇を重ねた。



End
2009.11.6
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