Novel・1
□反則な誘い
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放課後。
いつものように碓氷は生徒会室へと向かっていた。今日は幸村からの報告書をチェックして仕上げたら生徒会の仕事は終わりらしい。この後バイトもないと聞いていたのでどうしても口元が緩んでしまう。美咲とはこのあと約束はしていなかったが何か理由をつけて部屋へ誘うつもりだった。
生徒会室の近くまで来た時、幸村が出て来るのが見えた。
「それじゃあ会長行ってきます」
書類らしき紙の束を手にし幸村は職員室へ向かうのかこちらへやって来た。
「あ、碓氷さん!会長なら生徒会室に居ますよ。もう少しで終わりますから」
幸村は急いで通り過ぎて行った。
碓氷は生徒会室の扉を開けると目の前の美咲の姿に驚いた。
「あれ?ミサちゃんどうしたの?」
「な、何だよッ!」
美咲は碓氷を見ると直ぐに真っ赤な顔になった。
「いつものミサちゃんと違う」
碓氷は扉を閉め美咲へと近づいた。
いつもなら下ろしているストレートの黒髪が可愛くまとめられていた。
「さっきさくら達にされたんだよ!」
美咲はぶっきらぼうに答えると目線を逸らした。
「さっきって?」
碓氷は美咲の机に両手をつき覗き込んできた。
「つ、ついさっきだよ。放課後、生徒会室で幸村を待ってたらさくら達が帰りに寄って…って何か関係あるのかよ!」
「だって…可愛すぎるんだもん。先に他の男に見られたかと思ったら…何かね」
碓氷がわざと悲しそうに笑ったので美咲は更に赤くなった。
「ソレも反則…」
「な、何が反則なんだよ!」
「こんなにも可愛いミサちゃんが頬染めて睨むのが」
クスクス笑い出した碓氷を「変な事言うなッ!」と美咲は叩いた。
「いたーい!ミサちゃん。ご主人様にそんな事したら後でお仕置きだよ?」
ニヤリと悪戯っぽく笑う碓氷に美咲は思わず叩いた手を隠した。
「ただでさえ今その無防備な首筋にキスしたいっていうのを俺、我慢してるんだからあんまり誘わないでよね」
碓氷は美咲の耳元に唇を近づけ囁くように話しを続けた。
「こんな可愛い鮎沢を見たのが幸村の次で俺が1番じゃなかったっていうのは…結構俺の独占欲を刺激してるんだよね」
「そ、そんなのお前の…」
「うん。我が儘だよ」
碓氷は美咲の言葉を遮った。
「相手が幸村だろうと誰だろうと嫌なものは嫌なんだ。鮎沢の1番は何でも俺でありたい…」
碓氷が真剣に真っ直ぐ見つめてきたので美咲は戸惑った表情をした。しかし直ぐに碓氷を上目遣いで見つめると
「じゃ、じゃあ…」
美咲は碓氷のネクタイを掴み引き寄せた。
「1番じゃないかったかわりにお前に今日は独占させてやるよ」
碓氷は一瞬驚き頬が少し赤くなった。
「だから反則だって…」
真っ赤な美咲を見つめネクタイを掴む手を包むように握りしめ深く甘いキスを落とした。
End
2009.9.11