Novel・2

□挑発
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先日、星華組の組長のお孫さんの美咲お嬢さんがこの組の跡取りにようやく決まった。御子息はフラフラとよく失踪するため組長はしっかり者の美咲お嬢さんに早く組を任せたいようだ。ただそれを良く思わない奴も大勢いる。



「叶君、今日は美咲お嬢さんを俺が独り占めしていいの?」

話しかけて来たのは組長のお気に入りである碓氷拓海さんだった。お嬢さんのボディーガード兼お世話係だ。組長は碓氷さんに美咲お嬢さんと…とまだ考えていらしゃるようだが…。

「いつも独り占めしているようなものじゃないですか?」

「もちろん独り占めするつもりだけど今日のスケジュールを叶に聞いてこいって言われたから聞きに来たんだけど?」

そう言うと持っていた手帳を奪って確認しだした。

「今日は19時から会食がありますから遅れないようにお願いします。これはお店の地図です」

メモを渡すと碓氷さんは不機嫌そうに受け取った。

「会食ってあの変態お兄さんと?」

「気に入らないのはわかりますが言葉には気をつけて下さい。美咲お嬢さんの婚約者候補なんですから…」

「はいはい。でもあくまでも『候補』でしょ?」

「碓氷さん…あの方は有力候補ですよ。雅ケ丘組との繋がりはこの組にとっても必要ですから」

「必要ねぇ…お嬢さんの気持ちは関係なしなんだな」

「わかって頂けるよう昨日説得しました。それにお嬢さんも覚悟してこの世界を選んでいらっしゃるのですからわかって頂けたと思いますが?」

「へぇ〜」と、一言呟くと碓氷さんは美咲お嬢さんのもとへむかった。


「お互い好きなのに貴方が早く一歩踏み出さないからですよ?碓氷さん…」

叶はため息をひとつついた。

「我々の挑発に上手く乗りますかね…組長」

碓氷が出て行った扉を見つめ叶は苦笑した。


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