Novel・2
□愛妻家
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「あれ?碓氷…?」
「武沢?」
小学校の参観日に懐かしい人物に会った。
すでに授業は終わり「おわりのかい」という最後に先生からの連絡等を子供達が聞いている時間になっていた。
子供と一緒に帰るため廊下で待っていた碓氷に高校時代、クラスメートだった武沢が声をかけてきたのだ。
「あの会長と結婚したとは聞いてたけど…そっかぁ碓氷が父親かぁ…」
「お前だって父親だからここにいるんだろ?」
「まあそうなんだけどさぁ。碓氷が父親かぁ〜」
ニヤニヤしながら眺めてくる武沢に碓氷はため息をついた。
「武沢しつこい!」
悪い悪いと笑いながら武沢は話しを続けた。
「1年生かぁ…何か学校へちゃんと歩いて行けるのかとか勉強出来るのかって心配したけどちゃんと小学生になっちゃうんだな。ま、碓氷と会長の子供ならしっかりしてそうだし大丈夫だろうけどな」
「そうでもないよ。やっぱり心配したし今でも心配してる」
「でもまさか同じ小学校で同学年とは気がつかなかったよ」
「まぁ…先月、転校して来たばかりだから知らなくても仕方ないよ。暫く仕事で日本にいなかったんだ」
「海外で仕事かぁ〜やっぱり碓氷だよな!」
「お前の中の俺はどんなイメージだよ?」
クスクス笑いながら暫く高校時代の話しで盛り上がった。
「しかし碓氷って相変わらずカッコイイな」
「何だよそれ?」
「まずオーラが違うっていうかさぁ参観日に来ている母親達や先生方の目がハートマークだし…お前のフェロモンが無駄に多いってことかな?」
武沢は少し冗談っぽく言いながら笑っていた。
「そうだ!今日は会長いないの?」
「いや、来ているよ。上の子のクラスに行ってるはず。玄関で待ち合わせしてるケド?」
「え?まだ上がいたのか?!」
「え?5年3年1年ってこの学校にいるんだけど?」
「えーッ!俺なんてようやく上が1年生になったっていうのに…碓氷ってば意外に子沢山だな」
「意外にって何?しかも3人しかいないのに…」
呆れる碓氷に武沢は首を横に振った。
「今は少子化の世の中だぞ?3人でも子沢山だって。俺の所じゃ3人は無理!」
「だって俺、うちの奥さん愛してるからね。愛の結晶である子供が沢山いても構わないよ」
「よくそんな恥ずかしい台詞を堂々と言えるな…」
武沢は顔を少し赤くした。
「言いたくなるような良い女なの、美咲は…」
碓氷の幸せそうな笑顔に武沢は「ご馳走様」と笑って言った。
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