Novel・2

□残り香
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二人の関係は一見相変わらずのようだが時折見せる二人の笑顔が柔らかくなった。
その理由は碓氷さんが美咲お嬢さんとの仲を許して欲しいと頼みに来たと嬉しそうに組長が話していたから上手く挑発に乗ってくれたという事なのだろう。
組長は大喜びだったが問題は雅ケ丘組だ。縁談は美咲お嬢さんからお断りしたが逆に益々気に入ったようでほぼ毎日のように口説きにやって来る。



「先日お断りしたはずですが?」

今日も飽きずに大きな花束を抱えて雅ケ丘組の跡取りがやって来た。
玄関で冷静に対応する碓氷さんが何だか怖い。

「近くを通りがかっただけや。美咲に渡しといて」

ニヤニヤしながら碓氷さんに花束を渡した。

「今は美咲のちょっとした気の迷いや。お前の事は別に俺は気にしとらん」

「諦めが悪い男は嫌われますよ?」

笑顔なのに碓氷さんが怖い…。

「その言葉そっくりそのままお前に返すわ」

意味深にニヤリと笑うとそのまま帰ってしまった。
さすがというべきなのか碓氷さんの威圧に全く負けないあたりは雅ケ丘組の跡取りだと感心してしまった。

「美咲お嬢さん、まだ休んでるからコレの処分頼むね」

碓氷さんは怒っているのか少し乱暴に花束を渡してきた。

「よ、夜には予定が入っていますから遅れないようにお願いしますよ!」

美咲お嬢さんの部屋へ向かう碓氷さんの背中に慌てて今日の予定を告げると振り向かずヒラヒラと手を振っていた。
その背中を見送り大きなため息をついた。
でも口元は緩んしまう。厄介な問題はあるものの二人の関係について組長よりも喜んでいるのかもしれない。


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