Novel・2
□大切な人
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「美月何書いてるの?」
娘の美月がクレヨンを握ってグルグルと何かを書いている。おそらく文字のつもりなのだろう。
「しゃんたちゃんにおてがみ!」
「サンタさん?」
「うん!しゃんたちゃんにかわい〜い、いもぉとかおとぉともらうの!」
†††††††
「パパぁー!拓磨が私の消しゴムとったぁー!」
リビングのソファで寛いでいると美月が頬っぺたを膨らませ駆け寄って来た。
「もぉー!拓磨なんか大嫌い!」
子供部屋の方に向かって美月が叫んだ。
「拓磨とケンカ?」
美月を膝に座らせ膨らんだ可愛い頬っぺたを突いた。
「悟志に貰った消しゴム、拓磨がどっかに隠しちゃった…」
『悟志』というのは子供達の幼なじみで美月と同級生になる男の子だ。どうやら美月の事が好きらしいと七海が教えてくれた。
拓磨の意地悪はいつもの『ヤキモチ』だ。
「拓磨は美月の事が大好きだから意地悪しちゃうんだよ?お願いだから『大嫌い』だなんて言わないであげて」
何だか美咲と過ごした日々を思い出し苦笑した。
「それに拓磨は美月がサンタさんにお願いしてプレゼントしてもらった弟でしょ?」
美月を落ち着かせるようにギュッと抱きしめた。
「私は優しくて可愛い弟が欲しかったの!」
「拓磨は違うの?」
「うっ…」
碓氷はニヤニヤ笑いながら美月の頭を優しく撫でた。
「いつも美月に何かあったら一番に来てくれるのは誰だっけ?」
「拓磨…」
「夜、トイレに一人で行けない時は?」
「拓磨がついて来てくれる…」
「美月が男の子とケンカした時誰が仕返ししに行ったっけ?」
「もぉ〜全部拓磨だよぅ!あの子パパに鍛えてもらって強いのに手加減なしでボコボコにしちゃうんだもん!」
正確には殴る前に美月が止めに入るのだ。
拓磨と七海は昔から美月命といった感じで美月を取り合っている。
どうやら最近はそこに悟志君も加わったようだ。
拓磨は美月が悟志君から貰ったという消しゴムが気に入らなかったのだろう。
何だか自分の遺伝子を感じてしまいおもわず吹き出してしまった。
「パパ、笑い事じゃないのッ!明日、悟志に何て言えばいいのよー!」
「同じクラスだっけ?」
「しかも今、隣りの席だからチェックされるよ〜!」
「きっと今頃、七海が見つけ出しているだろうから大丈夫だよ」
美月が大好きな七海の事だ褒めてもらいたくて探し出してくれているだろう。
ぐずる美月を碓氷は子供部屋へと促した。
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