100

白い猿
1ページ/1ページ






「オレは昔、白い猿を見たことがあってな、武」




突然、親父はそう切り出した。いきなりのことに一瞬反応が遅れた。
ヒバリは隣で寿司を食いながら目線だけ親父に向けている。




「あれは、武が産まれる前だったな。出前のときに並盛山の近くで」

「並盛山?」

「おう。いやぁ、びっくりして足を止めて見てたらよ、そいつもこっちをじっと見てくるんだよ。暫くしたらどっか行っちまって」

「へぇ、」

「そんで家に帰ったら…母ちゃんから子供ができたって知らされたんだ」

「…それって」

「なんか、あの白い猿が縁起を運んできたみたいな気がしてならねぇんだよなぁ」

「面白いね」




それまで一言も喋らなかったヒバリが、ウニをぽんと口に運んで呟いた。さぞ楽しそうに会話に参加する。




「興味深いな、その猿」

「お、ヒバリちゃんもそう思うか?」

「幸運を運ぶ猿、だったりしてね」

「そうだなぁ、昔から白い蛇は縁起がいいって言われるしな。おっと、そろそろ出前の時間だ、そいじゃちょっくら行ってくる。ヒバリちゃん、ゆっくりしてけ!」

「ありがと」

「行ってらっしゃい」




ぱたんと扉が閉まるのを確認してからヒバリは再び寿司を食べ始めた。食べながら、ヒバリにしては珍しく自分から話題を振った。




「君、縁起がいい子なんだね」

「かもなー、」

「白い猿、か」

「会ってみてぇな、白い猿」

「そうだね…君が車を出してくれるなら行ってあげてもいいよ」

「まじ?行こうぜ!」




…どうやら白い猿が縁起を運んでくるというのは間違いではないらしい。




















い猿

(だってヒバリからのお誘いだし)


















白い猿がほんとに縁起がいいのかは知りませんが白い猿ってほんとにいるんですよね。会ってみたいものです。



091103

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]