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□もぎとってしまいましょう
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※微えろ注意
グラウンドに響く賑やかな笑い声で目が覚めた。いつの間に眠ってしまっていたのだろうと時計をみやればぴったり11時を指していた。ダルい体をゆっくりと起こせばソファーのスプリングがぎしりとしなる。まだ半分しか覚醒していない体でぼんやりとグラウンドを覗くべく窓際に移動する。どうやら体育の授業中のようだ。
かきん、乾いた音と共に青空に白が吸い込まれていく。バッターボックスに目を移せば、ピッチャーに笑いながら手をあわせる山本の姿があった。ハンデくらいつけろだのなんだの文句を言う相手チームに笑って謝りながらベースを次々に踏んでいく山本にきゃあきゃあと黄色い声をあげる女子たち。
「…」
なんだ、これ。
くるりとグラウンドから目を反らしてソファーに倒れ込む。なんだこれ。無性に腹が立つ。不意に破壊衝動に襲われた。…意味がわからない、何をイライラしてるんだ僕は。
グラウンドから聞こえる群れのざわめきはいつの間にか聞こえなくなっていた。
「ヒバリー、飯食おうぜ」
「…いらない」
「ん?食欲ないのか?」
「……そうじゃ、ないけど」
昼休み、いつものようにやってきた山本はいつもと変わらず笑顔だった。それを見るといつもは凄く安心する(絶対口には出してらないけど)。今日はなんだか嫌に不安になる。別段山本が僕になにをしたわけではないんだけど。山本は不思議そうな顔をして、どーしたってずっと聞いている。
…なんだろう、なんか、
「山本」
「ヒバ、」
ぐっと彼の襟を引っ張ってぶつかったみたいなキスをした。なんでこんな行動をとったかは自分でもよくわからない。でも、心の奥底から沸き上がる満足感はすごく心地よくて、依存性があるみたいに手離したくなくて。いつの間にか夢中で唇を重ねていた。浅く、深く、甘く。山本のくぐもったような声が耳に届いた。
「っ、は、ヒバリ?」
「…山、本」
「ヒバリ、」
「山本、山本、山本、」
「うん、…恭弥」
「、たけ、し……っ」
噛みつくようなキスに、身体中の力が抜けていく。熱い。それでも何かがすごく伝わってくるような暖かい感覚がして、必死にしがみついた。
舌を絡めて、お互いの温度を感じあって、思いっきり抱き締めあってひとつになって眠れたらどれだけ幸せか。
「っふ、っ…けし、」
「っ、恭弥、泣くなって」
「泣いて、ない」
「…理由、聞いても大丈夫?」
「っわからない、わからない、けど…!」
君は、僕のだ。
乾いた声で小さく言った。ちゃんと、聞こえてただろうか。
ぎゅうと強く抱き締められて、彼の心臓の音が聞こえた。
「好き、すっげぇ好き。大好き」
「っ、」
「オレは、ずっとあんたの隣にいるから。だから、大丈夫だから」
あんたは、オレのだ。
はっきり耳元で囁かれたこの響きを、生涯消えないように刻み付けよう。
だから証拠に、愛を頂戴?
邪魔をするモノはもぎとってしまいましょう
(君しか)(あんたしか)
(必要ない)
ええええろいなんてのは書いてた私が一番よくわかってますし書いてて恥ずかしくなりました。
たまには、ね!
091106