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青い果実
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手を伸ばせば届く距離なのに、君への触れ方がわからない。きっと困らせてしまうんだろうななんて思考が動きを鈍らせるんだ。だって獄寺くんは優しいから、きっとどんなわがままを言っても笑って受け入れてくれるだろうな。でもオレはそんな正直に生きる勇気はないから。だから今日もまた、伸びかけた手を気付かれないように引っ込めるんだ。



突然雨が降ったのはその日の帰りの事だった。




「うわ、今日降水確率10%だったのに」

「多分通り雨っすね」

「傘、持ってきてないのに」

「あ、10代目、よろしければこれ使ってください!」




そう差し出された紺色の折り畳み傘を受け取ってお礼を言ってから、獄寺くんには傘がないことがわかった。少し考えて、一つ深呼吸。そのまま雨空の下へ出ようとした彼に声をかける。




「獄寺くん、一緒に入ろう!」

「え、」




声が、裏返った。うわぁ超ださい!!ちらりと獄寺くんを見れば戸惑ったように目線を泳がせていた。
だってまさかの通り雨で傘は一本しかなくて一緒に帰ろうってんだからおんなじ傘にふたりで入ったって別にあいあい傘とか深い意味はないんだから…

やっぱり、困らせた。

獄寺くんはオレといても楽しくないのかな。そうだよね、よく考えてみればいつも獄寺くんはオレに遠慮ばっかりしてるし。あ、やばい普通に泣きそう…




「じゃあ、オレが傘持ちますね!!」

「え、」




驚いて顔をあげれば嬉しそうにオレの手から傘をひょいと取り上げる獄寺くんと目があった。獄寺くんは反対の手でオレの目尻を親指で拭う。困ったように微笑んですいません、てオレの涙を拭ってくれた。なんで謝るのって言おうと口を開いても出てくるのは言葉にならない掠れ声。
ふと遠くから女子の笑い声が聞こえてここが学校だと思い出す。だんだん近付いてくる足音に早く逃げなくちゃとは思うのに、うまく足が動いてくれない。もう頭の中ぐちゃぐちゃだ。




「10代目、これ持っててください。失礼します」

「、わ」




ぐっと押し付けられた傘、ふわりと浮き上がった体。そのままばしゃばしゃと雨でぬかるんだグラウンドを走る獄寺くんの足音と傘にぶつかって弾ける雨の音。今は全部、オレだけのものだ。
獄寺くんはそのまま、近くの公園の土管の中へ駆け込んだ。傘だけが引っ掛かって中に入りきれずに地面に落ちる。




「っここまでくれば…」

「っ、ごめ…んね」

「な、10代目は何も悪くありません!オレのせいです!!」

「違っ、う!オレが、勝手に!」

「じゃあ、オレも勝手に謝ります。すいませんでした」

「…ごめん、ごめんね、びしょびしょになっちゃったね」

「それを言うなら10代目だってそうっスよ!風邪ひきますから、取り敢えず早く家に……」

「やだ、」

「…10代目?」




なんの躊躇もしなかった。飛び付くように獄寺くんに抱き着いてしがみついた。驚いたようで固まっている獄寺くん。…今、あんなに触れたかった彼に触れていると思うだけでなんだかむずがゆい気持ちになる。
お願い獄寺くん。君を困らせるのを承知で、わがままを言ってもいいですか?




「き、すき、獄寺くんがすき、だいすき」

「…じゅ、」

「ずっとずっと触りたくて、触れたくて、でも届かなくて…!好きで好きで仕方なくて…!」

「っ、」

「でも、獄寺くんを困らせたくなくて、でもそうするとだいすきが積もるんだ!どうしたらいいのかわからなくなる!でも獄寺くんに嫌われたくない、なんで、こんな、オレは…!!」

「オレだって!!あなたが大好きです、苦しいくらい!!」

「っ!」




ずっと触れたかった唇が、自分のそれと重なった。熱を持ったそれは自分から深く深く求めていく。ほとんど無我夢中だった。時折漏れるお互いの甘い声ととろけそうな程熱い舌。
つ、と銀色が名残惜しそうに二人の間に糸を引く。




「っは、…わかっていただけましたか」

「っ…オレ、ごめんなさい」

「謝らないでください」

「ごめん、勝手に不安になって勝手に泣いて…困らせて」

「いいんですよ、10代目に振り回されるのなら大歓迎っス!だから…もっとオレを頼ってください」

「う、っん、ありがとう、ごめんね、獄寺くん」




ああ、やっぱりこの人はすごく優しくてかっこよくてオレの自慢の恋人だ。ありがとうって何回も何回も呟いた。次はごめんねの分のだいすきを君にたくさんあげるから。





















青い

(色付き始めた二人の世界)






















獄ツナの甘々が書きたくなってがりがりやったらすごく甘くなった。
ツナさんが乙女だ…



091109

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