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□真っ赤な顔では説得力がありません
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オレ、山本武は、雨も降っていないのに水浸しになりました。
意味がわからず立ち尽くすオレに、水をぶっかけてきた知らないヤンキーなお兄さん。唖然としているオレをギロリと睨んでる。ヒバリのに比べたら怖くねーなあなんて暢気に考えてる自分がいた。
「あのー…?」
「人の女に手ぇ出しやがって、ふざけてんじゃねーぞクソガキ!」
水の入っていたペットボトルをぱこんとオレに投げ付けて、ヤンキーなお兄さんは大股で帰っていった。
……どうやらオレは間接的にヤンキーなお兄さんの気に触る事をしてしまったみたいだ、彼女と仲良くやってくださいよ、なんて苦笑してから今の自分の状況を改めて確認してみる。うーん、このままじゃ教室行けそうにないな、制服がぐちょぐちょできもちわるい。鞄が濡れてるところを見ると、練習着も無事じゃないよな。
朝っぱらからとんでもない目にあったもんだ。
「…山本武?」
「あ、ヒバリ」
偶然にもヒバリと遭遇。なんだか怪訝な顔で見られてるけど気にしない、気にしない。
微妙に距離をあけてヒバリはオレの様子をじろじろと観察して、ため息をついた。
「朝からヒバリに会えてラッキーなのな!」
「…君、その格好、」
「ちっと色々あって」
「君の上だけ雨でも降ったのかい?」
「……はは」
苦笑いのオレにヒバリは本日二度目のため息をつくと、一人でさっさと並中へ歩き始める。
「ヒバリー」
「ついてくるな」
「でも目的地一緒だから仕方ないのな」
「じゃあ離れて歩け」
「冷たい」
「全身びしょ濡れのやつと歩きたくないんだよ」
「あー、だよな」
「隣に並ぶな!」
「まあまあいいじゃねーか」
「よくない!」
ぐるんと振り向いたヒバリはなんだか可愛くて。あー抱き締めたい。
手を伸ばせば、びしょ濡れで抱き着くな!と殴られそうになったから我慢することにした、しんどいのな。
「…後で応接室ね」
「え?」
「ネクタイ、ついてないから」
「あ、やべ」
「…ついでにバスタオルでも貸してあげるよ」
「……ひ、ヒバリぃ!!」
「抱き着くな!!」
真っ赤な顔では説得力がありません
((結局二人してびしょ濡れになった。))
ツンデレか!
ヒバリさんがまったく別人と言う悲劇…
090721