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大人になりきれない
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今日の仕事は楽だった。相手先がすんなり書類の内容を受け入れてくれて予定していたより早く切り上げることができた。我らがボスから渡された明日中に提出の報告書を鞄にしまいこんで、玄関の鍵穴に鍵を差し込んだ。




「あれ?」




室内は真っ暗で、物音ひとつしない。だけども見覚えのある靴が無造作に脱ぎ捨てられてある。

確かにいつでもきていいからと合鍵は渡していたが、今までそれが使われた形跡は一度もなかった。向こうなりに遠慮していたのか、家に来たいときは必ず『帰ったら連絡して』と一言メールが届いていて、こちらが今家にいるとわかる時にだけ来ていたのだ。
それが今日は違う。なにかあったんだろうかと中へ足を進めて電気をつけた。リビングには見当たらない、キッチンにもいない。となれば寝室、できるだけ静かに扉を開けば白いシーツに沈み込むように眠っている黒。上着も脱がずに倒れ込んだような形でぐっすり眠っている。その横に腰掛けると、ぎしりとスプリングが唸る。その音に反応してか、切れ長の瞳がゆっくり開かれた。




「……」

「ヒバリ、ただいま」

「…おかえり」

「どーした?」

「…お腹が、減ったから」

「じゃあ飯にするか?つっても材料ないから簡単なのしかつくれないけどな」

「うん、…でも、」




ぎゅうと服を握られる。髪をすいてやれば擽ったそうに目を細くした。
今のふたりはいつもよりなんだか穏やかで、仕事疲れも寂しさも吹っ飛んでいくようだった。






















人になりきれない

(「今は、このままがいい」)



(いつまでたっても廊下に響く足音が忘れられないんだよ)
(あのときみたいに、君を待つのも悪くないと思ってね)


























赤いリモコン様に捧げます。キリ番2000おめでとうございました!

マフィアっぽい山雲、マフィアかこれは。←
ビターな甘さを目指してみました。中学時代を懐かしんで山本を待つヒバリさん、とか。

赤いリモコン様のみお持ち帰り、返品OKです!もちろん書き直しも受け付けますので!
では、ありがとうございました!!



花守

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