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はあ、と吐いた息は見事なまでに真っ白だった。先程からちらちらと雪が降りだして身体を冷やしていく。ヒバリはどうしてっかなーなんて考えては顔が綻んだ(でも寒すぎてうまく笑えない。多分ひきつってる)。
ガサガサと音をたてるビニール袋を片手にやっと校門前にたどり着いた。ひょいと覗けば明かりがついている部屋が一つ。やっぱり、なんて確信めいたもので心を弾ませながら、静かな校舎に足を進めた。
「ヒバリ!」
「……」
ノーノックで容赦なく扉を開けば予想通り睨み付けてくる切れ長の瞳。大晦日まで学校にくるとは、流石と言うかなんと言うか。
「…何の用?」
「ヒバリに会いに」
「…」
「ケータイに電話したのに出ないからさー」
「電池切れた」
「そっか。ほら、差し入れ」
コンビニで買ってきた肉まんを渡せば無言で受け取ってかぶりつく。可愛いなあと思って見てたら食べづらいと殴られた。
「んで、ヒバリ今日なんか予定ある?」
「…ない」
「じゃあ家来ねぇ?親父がヒバリが暇なら呼んでこいってさ」
「寿司があるなら行くよ」
「あるある」
「これ、食べ終わったらね」
「おう、仕事は?」
「大晦日に仕事を残すほど馬鹿じゃないよ」
「そりゃそうだ」
気が付いたらなくなってた肉まん。すっと立ち上がったヒバリに続いて立ち上がって、校舎を後にした。
斜め後ろから、ヒバリの足音が聞こえてくる。時々足音が重なったりするのが地味に嬉しくなったりなんかして。
「ヒバリー、」
「何」
「来年もよろしくな!」
「…まだ早いんじゃない」
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