だって俺、テニス一筋だもん!
翌日。学校に着くと、何やらみんな賑やかだった。
「何これ?今日何かあるの?」
私が近くに居た健太に聞くと、健太はその栗色の細い髪をさらりと揺らして笑う。
「凛知らねぇの?新学期といえば…部活勧誘だよ!」
健太に言われてみれば、新入生を先輩たちが必死に自分の部活に誘っているのが分かった。そういや、今日は授業無かったんだっけ。
なるほど、と一人納得する。そういえば、奨太と健太はテニス部に入ってたな…やっぱり入部させようと必死なのかなぁ。
「あ、凛もテニス部入る?」
「何言ってんの」
生憎私は中学ではテニスをやっていたが、高校ではゆったりと帰宅部を楽しもうと決めたのだ。
健太は案の定、冗談なのにーと口を尖らせる。というか、それ以前に私は新入生じゃない。
「じゃあさー新入部員集めだけでも手伝ってよ」
顔の前で両手を合わせて可愛らしく私を見る健太に、私は頷くしか無かった。
「じゃ、どうしよっかな〜。…あ、あいつなんてど?」
「いや私に聞かれてもなぁ…。いいんじゃなーい?」
健太の指差す先には、少し小柄で可愛い系の男の子と……あれ、何か見慣れた顔が。
「ねえ君たちテニス部どう?」
「え?」
「は?……って健太兄…」
「よう葵!」
葵だった。
あれ、ていうか健太ってもともと葵を入部させたかっただけ…?なんて考えながら健太の後を追う。
「凛姉も。何やってんの二人して」
「「新入部員集め」」
「ああ…健太兄もやってたんだ。あれ何故凛姉まで?」
「まあそれはさておき!葵、ときみ!テニス部入らん?」
「テニス?」
「葵中学でやってたっしょ。是非続けるべきだからさ」
「えぇ…どうする純?」
ずっと葵と健太の顔を見比べていた純、と呼ばれた子は首を捻らせ、さあ…と言った。
私が見たことが無い限り、昨日に知り合ったんだろう。高校生、と言うにはまだいくらか幼い顔立ちの子。
「あ、こいつ日向野純。テニスはやってたっぽいよ」
「それは好都合。あ、俺篠崎健太ね」
「どうも。…テニスかぁ…葵が入るんなら入ろうかな」
くぁ〜、と背伸びをして純くんは言う。葵は少し考えてから、じゃあ入る、と言った。
…何か意外だなぁ、葵が高校に入ってまでテニスを続けるなんて。てっきり高校は私と同じ帰宅部かと思ってたのに。
健太は嬉しそうにガッツポーズを決め、葵に握手を求めたが葵はそのまま健太の横をすり抜けて行ってしまった。純くんはニッコリ笑い
「またね、健太先輩。…と、凛先輩♪」
「またなー純」
…ん?あれ、私純くんに名前教えたっけ…と思いつつも手を振る。
その横で健太はいい後輩を見つけてしまった、と満足気だ。
「それにしても、純もテニスやってたんだなー」
「うん。良かったねぇ、案外純くんの方が上手かったりして」
「それはないない!…多分」
(その時はまだ気づかなかった)
(日向野純という人物が)
(何者なのか)
10/05.管理人もテニス部。れいな