顔は天使、中身は悪魔の最悪男だ
ついに来てしまった日曜日。
私は気分が沈みながらも集合場所の白沼時計台に向かっていた。
「あ、凛」
「奨太…」
私が歩いていた後方から奨太の声が聞こえた。振り返るとやっぱり奨太。
元気が無ぇなーと笑う奨太だが、きみは逆に元気がありすぎるよ。
「なに?そんなに嫌なの?」
「う、別に嫌じゃないけどさぁ…何というか、嫌な予感がするというか、先輩とか苦手なんだけどみたいな…?」
そう、何だか今日は朝から嫌な予感がヒシヒシするのだ。名も知らない先輩も含めてお出かけなんて…。
みっちゃんと奨太と出かけるのは良い。でも健太も伊藤も居ない。その代わりに噂の先輩。そういうのって、あまり好きじゃない…私は。何が嫌かはよく説明できないが、この5人がバラバラになるのが嫌だった。
「まあ大丈夫だって。俺も居るし。それに近藤がいいって選んだ先輩だぜ?」
「…そうだよね」
「でも凛は昔っから俺ら5人の中に入ってくる他人は苦手だったよなぁ」
「そうだったっけ?」
「そうだよ!」
ケケケと笑ってみせる奨太に私もつられて笑う。
そんな事をしていると少し安心して、楽しく一日を過ごせそうな気がした。
「凛!」
私と奨太が集合場所に着くと、すでにみっちゃんとその先輩とやらは待っていた。
「ごめんごめん」
「もう遅かったじゃない!」
二人きりって辛かったんだから、と私に耳打ちするみっちゃん。私は苦笑して奨太を見る。
「途中で凛が行きたくないって渋ってさ〜」
「そんな事言ってません」
ちら、と先輩を見てみたが、私には知らない先輩だった。まあカッコイイというのは嘘では無いかもしれない…かもしれない。
奨太を横目で見ると、何だか驚いた表情で先輩を見ていた。
「どうしたの奨太…?」
私が小声で聞くと、やっぱりいつもの笑顔に戻って
「べつに?」
と言った。
「あ、先輩!紹介しますね。こちら、あたしの幼馴染みの櫻井凛」
みっちゃんがいきなり私を紹介するから、少し戸惑ったが、よろしくお願いしますと精一杯の笑顔をつくった。
「よろしくね、凛ちゃん」
「そしてこちらも同じく佐々木奨太です」
「…よろしくお願いしまぁす…」
「…よろしく」
奨太は何だか怪訝そうだったが、あまり気にも留めずにみっちゃんは先輩を紹介しに入る。
「で!こちらが野口和樹先輩っ!」
…っ、え?
「の、ぐち…和樹…せんぱい…?」
「うん、よろしくね」
え、野口って…あの…?
奨太を見ると、やっぱりなって顔で先輩を睨む。
「(奨太、野口って…)」
「(…ああ)」
(やっぱり)
(嫌な予感は当たってしまう)
10/08.みっちゃんピンチ。れいな