青春1ページ!

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その頃、凜たちの後方の物陰には二人の姿があった。

「ふぅ、遅いなぁ…健太」

こんにちは。僕は伊藤なつです。え?今何をしているかって?
見ての通り、佐々木たちの観察…というか尾行だよ。何か今日いきなり健太に行こうって言われて仕方なく。それにしても健太、遅いぞ。

あ、健太………いやまてよ。

「大変だ伊藤!」
「いや篠崎の格好のほうが大変だ!何で女装?!」

僕に駆け寄って来た健太は、何処で手に入れたのかゴシック風の女ものの服を着ていた。何が大変かって健太の格好だ。
僕がツッコミをいれると、健太はさも当たり前のように首を傾げる。

「何でって尾行には変装が基本だろ?」
「いやでも何でよりによって女装…」

「それより!あの先輩、タラシで有名な野口だぜ!」
「野口?」

僕の疑問を華麗にスルーし、話し始める健太。野口、名前だけ聞いたことがあるかも…。

「ああ。近藤のヤツ、血迷ったか」
「え?…何かキャラが違うけれども」
「よし行くぞ伊藤隊員」
「(聞いちゃいねぇ…!)ちょ、待ってよ…」

でもあの4人を見る限り、佐々木と凛ちゃんは完璧その先輩の本性を知ってるみたいだ。
当の近藤は知ってか知らずか、満面の笑みを野口に向けている。…これは

「なにかあるかもな」
「(心読まれた…!?)…ありそうだね」
「あ、動いたぞ4人!」

4人に着いていき(尾行していき)来てしまったのが、ベタっぽいけど遊園地。
さっさと入っていく4人を見て固まる僕たち。

「…伊藤、金持ってる?」
「…ギリギリ。多分これで今月死ぬ」
「…俺もだ…」

涙を呑みながら金を払い、遊園地に潜入成功した。
我ながら素晴らしい根性だと思う。今日は乾杯だなぁ。

それから尾行を続けるも、野口に何の変化もなし。いつものように、胡散臭い笑顔を浮かべているだけ。
何だ、そんな悪い奴でも無かったのかと思ったとき、健太は真剣な顔をして言う。

「あいつ、奨太をずっと気にしてる…」
「え、何それ野口ってホモみたいな?」
「違うわアホ!だぁーかぁーら!野口は近藤をさっさとモノにしたいんだけど奨太が居る限り、ヘタに手を出せないってことだよ。まったく最低な野郎だな…」

健太が半ば呆れて言った。
え、それって…

「野口最低じゃん!」
「だから言ってんだろ!とにかく、野口から目を離さないほうが良さそうだな…それに凛も狙ってるっぽいし」
「うん…」
「まだ平気だろうけど、そろそろヤバイかもなぁ…」

呟くように言った言葉を、僕はよく理解できなかった。

「それってどういう意味?」
「どういうってお前なぁ…。ここは遊園地だぜ?今はまだジェットコースターとかティーカップとかそんな感じだけど、考えても見ろよ?お化け屋敷に観覧車ってものは暗いところだったり二人きりだったりするんだよ」
「なるほど…」
「だから、お化け屋敷は二人ではぐれることだって有り得るし。暗いところなら何でもできる。野口にとって大喜びのチャンスってわけ。それに観覧車なんてもってのほか!あんな男女二人ずつで観覧車なんか行って、男同士、女同士で乗るやつなんてそうそう居ねぇだろ。しかもこの観覧車はかなりデカイ、つまり乗ってる時間が長い。ということによってお化け屋敷以上に何でもできてしまう。分かったな?」
「うん…」

でも女装した格好で言われてもカッコ良くない…!

「どうしたもんか…困ったな」
「あぁ!大変だよ篠崎!4人がお化け屋敷のほうに向かってる!」


はてさて、どうします!!!?



(何だって!?)
(どうする…?)

10/08.健太女装乙。れいな


 

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