花鳥風月

□いつか王子様が
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朱雀を召還して、青龍との戦いが終わってから数週間経ったある日。
井宿と一緒にいたい。その気持ちは本当だった。
でもやっぱり、ためらいはあった。
井宿に一緒に来てと言うことが出来ないまま時間は過ぎてーー。明日はもう、私はこの世界にはいない。


井宿「こんばんわ、なのだ」
あい「……あ……井宿……」
井宿「…どうしたのだ、こんなところに呼び出して」
あい「さ、最後の挨拶をしようと思ったの…」
井宿「最後の挨拶?」
あい「うん…明日は、もう出発だからね」
井宿「わからないな。どうして?オイラにだけそんなことを?」
あい「それは…私は…その…あなたのことが…好きだから…」
井宿「それでも…離ればなれにならなくてはいけないのだ?」
あい「それは…」
井宿「つまり…オイラとキミの間に出来た絆はその程度ということなのだ?」
あい「そ、そんなことないだけど…井宿、意地悪……言わないで…」


最後は…笑って、さよならを言いたかったのに。


井宿「意地悪ではないのだ。キミがオイラを信じていないだけなのだ」
あい「え……」


井宿はそっと、仮面を外す……。


井宿「オイラの……キミへの気持ちを、なぜ信じてくれない。何度誓ったことか。この身はキミのためにあるのだよ」
あい「……井宿」
井宿「キミが行くなら、オイラも一緒に行くに決まってるのだ」
あい「でも……それは……この世界を……あなたが…捨てないと……」
井宿「本当に大切なもののためなら、他のことは全て捨てられる。人はそういう生き物なのだ」
あい「……でも……」
井宿「……キミは何度、大切な仲間のために、命を投げだそうとしたのだ?」
あい「それは…」
井宿「オイラだって、キミのために世界を捨てるくらいの覚悟はあるのだよ!どうか…この井宿に、キミのお供をさせてくれないだろうか」
あい「ホントにいいの?」
井宿「キミがいない世界なんてつまんないのだよ」
あい「…井宿。」
井宿「では、今日こそ記念の日なのだ」
あい「なんの……?」
井宿「2人が永遠に一緒にいると誓った日…」
あい「…うん」
井宿「では、祝いにひとつ、素敵な贈り物を……」
あい「贈り物?」
井宿「目をつぶっていただきたいのだ。我が姫」
あい「(照れながら)…はい。」
井宿「だ♪」


不意に、足元から地面の感覚がなくなってー。


あい「え……え……?!」
井宿「大丈夫なのだ。目を開けるのだ。朱雀の巫女」
あい「と……飛んでる……?!」
井宿「朱雀の影響力が強くなってる今ならーー。これくらいは出来るのだ。見るのだ。この光のひとつひとつが、キミの護った命だ」


あたしは井宿にしっかり掴まっていた。


あい「…私だけじゃないよ。みんなで…」
井宿「…だ。みんなでなのだ」


井宿と一緒に居たい気持ちを伝えなきゃ…


あい「…ねぇ、井宿」
井宿「だ?」
あい「私のこと…好きになってくれて、ありがとう。大好きよ、井宿。」
井宿「……それは、こちらのセリフなのだ。好きになってくれて……ありがとう」


朱雀への2つめの願いで、深咲ちゃんを現実世界に帰した私はーー。
最後に、私の世界で、私と井宿が結ばれるように願がった。
この世界に戻ってから数年後、私たちは再開した。朱雀が導いてくれたのか、すぐに井宿だと分った。


あい「井宿?」
井宿「よかったのだ…」
あい「あれ?目?!」
井宿「そうなのだ。こっちの世界に来た時に、朱雀が治してくれたようなのだ。」
あい「井宿…綺麗な目だよ…」
井宿「ありがとうなのだ。」
あい「井宿、行こう!」

井宿は大学生となっていた。
あいは井宿に日本文化を教えた。井宿にとって、こっちの世界のものは全てが初めてだった。
朱雀によって、こちらの世界の記憶を植え付けて貰ったものの…

井宿「あい、これはなんなのだ。」
あい「それはね…浴衣よ。着たいの?」
井宿「だ♪」
あい「井宿なら絶対似合うと思うわ。」


井宿は浴衣を試着した。


井宿「あいは着ないのか?」
あい「あ、あたしはいいよ〜」
井宿「オイラが選んであげるのだ!あいは肌が白いから…」


浴衣を選んでくれてる井宿を見ると、なんだかまだ信じれない。


井宿「だ♪この花柄が似合うのだ!」
あい「そうかな〜」


私達は浴衣を買って、外へと出た。
井宿が住んでるいるアパートへと向かった。
空は、紅南でみた空と一緒だった。


井宿「どうしたのだ?」
あい「みんな元気かなって〜」
井宿「元気だと思うのだ!」
あい「いつも一緒だったから…」
井宿「オイラはずっと傍にいるのだ。」
あい「…ありがとう。」
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