08/18の日記

17:11
零崎 芽織の最後の日  <もう少しでいいからお傍にいたかったですわ……>
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『お初にお目にかかります、私零崎芽織と申します。以後よろしくお願いいたしますわ』


 そういった彼女の眼の前には無桐伊織――――否零崎舞織がいた。
 いきなり挨拶されて驚く舞織。


「え、えと、芽織ちゃんでしたっけ?」

『そうですわ、舞織お姉さま』

「お、お姉さまですか?」

『ええ。だって私たち家賊でしょう?』

「芽織!!」


 混乱する舞織とにこにこと笑っている芽織。
 会話がかみ合ってない二人を止めたのは彼女たちの兄である零崎人識だった。


「どうしてお前がここにいるんだ?」

『何故、だなんて滑稽ですわ人識お兄さま』

「んなの言ってんじゃねえ。俺はお前に来るなっつたろーが」

『新しいお姉さまに挨拶しない妹だなんて嫌われてしまうじゃありませんか』


 笑顔で言う彼女。それが真実か嘘かはわからない。
 わかるとすれば彼女が慕っている零崎軋識、彼だけだ。
 そんな芽織の答えに人識はがくーとうなだれる。


「……ホント喰えねえ奴。俺は兄貴の次にお前が嫌いだぜ」

『あら、私は軋識お兄さまの次に好きですわよ?』

「あ、あのー……」


 芽織の言葉にまた言い合いを始めようとする2人を止めたのはすっかり忘れ去られていた舞織だった。
 声をかけられたことにより人識は咳払いをして話を始めた。


「この際だから紹介しとく。兄貴が命懸けで守った新しい妹、零崎舞織だ。
 で、こっちが――――」

真空自在(アサルトレプリカ)零崎芽織ですわ』

「舞織です。よろしくお願いしますね」

『ええ、お姉さま』


 改めてにこにこと挨拶する2人。
 人識はやってられねえと一人どこかに行ってしまった。


『舞織姉さま、あちらでお茶しませんこと?私お話がしたいですわ』

「ではお言葉に甘えてしましょうか。人識君もしばらくしたら戻ってくるでしょうし」

『ええ』


 2人はそう言って近くのカフェに入りお茶をすることにした。
 芽織は紅茶を、舞織はコーヒーを頼んだ。


「他の家賊の方ってどんな方なんですか?多分会う事はないと思うので教えてくれませんか?」

『わかりましたわお姉さま。ですが私から見て、ですわよ?』

「それでいいですよ」

『では……

 まず人識お兄さまですわね。放浪癖がおありで、よく双識お兄さまが探しに出かけていましたわ。たしか……“ヒモ”という形で生活してらっしゃるんですって。先程も申しましたように私は軋識お兄さまの次に好きですわ。ナイフやとがったもので人を殺すのがお好きなようですわ。

 次に双識お兄さま。双識お兄さまは……一言で言うと“変態”ですわね。私が“双識お兄さま”と呼んで差し上げるとすごく喜んでくださいましたわ。でも軋識お兄さまが“近寄っちゃだめっちゃ”とおっしゃってましたのであまり近づいたりはしませんでしたけど。曲識お兄さまがよくそばにおりましたわ。“自殺志願(マインドレンデル)”という鋏で人を殺すのがお好きなようですわ。

 そして曲識お兄さま。音楽家の方でお店も経営していらっしゃる零崎でも珍しい方ですわ。“逃げの曲識”と呼ばれるほどあまり戦いはしませんの。双識お兄さまを慕っていらっしゃるようですわ。音で人を操ったり衝撃波で攻撃したりする呪い名みたいな方ですわ。“少女趣味(ボルトキープ)”と呼ばれていて、少女しか殺さない、と零崎の中で唯一殺しに条件がある方ですわ。

 最後に軋識お兄さま。零崎で唯一の常識人ですわ。殺人鬼で常識人というのもおかしいですけどこれがぴったりだと思いますわ。私が零崎になったときに見つけてくださったのが軋識お兄さまですの。だから私はお慕い申しておりますわ。“愚神礼賛(シームレスバイアス)”という釘バットで人を殺しますわ』

「あれ?零崎の人たちってそれだけなんですか?」

『いえ、もっといらっしゃるんですが全員と面識があるわけではないので三天王の方と人識お兄さまだけ紹介させていただきましたわ』


 いけませんでしたか?芽織はそう付け足した。いいんですよーと舞織は返す。
 それからしばらく雑談をして人識が戻ってきたのを区切りに別れた。

 そして芽織はある人物に会いに行く。零崎一賊を殺している人物。名前も姿もわからない。だが家賊の仇は打たなければならない。命をかけてでも。


『最後に人識お兄さまにお会いできてよかったですわ。“軋騎”でいる軋識お兄さまにはお会いできないですし』


 そう言った彼女はとても悲しそうな顔をしていた。頬には一筋の涙が流れている。
 彼女はわかっていたのだ。これが最後なのだと。家賊の敵を討つ事は出来ないのだと。


『もう少しでいいから軋識お兄さまのおそばにいたかったですわ……』


 彼女はそう呟きゆっくりと歩みを進めた。

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01:15
零崎 芽織の最後の日2  <愛してます>
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『お初にお目にかかります。真空自在(アサルトレプリカ)零崎芽織ですわ』

「へえ……有名どころが来てくれたんさ?」

『有名だなんて……お兄さま方には到底及びませんわ』


 芽識が話しているのは包帯を巻いた眼鏡の女性。隣には橙色の髪で狐のお面をかぶった人物がいた。
 芽識は橙色の髪をした人物が一人だけ思い当たる。だけど、彼女は死んだはずでは?


『一つだけお聞きしても?』

「なにさ?」

『お隣の方は……真心お姉さまですの?』


 ピクっ。包帯を巻いた女性はかすかに反応した。
 芽織の言った通り隣の少女は想影真心のようだ。


『真心お姉さまですの……。もうお会いできないと思っておりましたわ……。
 でも、操られる真心お姉さま……滑稽ですわね。いーお兄さまの言葉をお借りするなら戯言でしょうか?』

「………………め…い……織?」

「なっ!!?」


 芽織が“戯言”といった時、真心が芽織のことを呼んだ。
 流石“人類最終”。意識はあったようだ。


『あら私がお分かりに?なんて戯言なんですわね。
 真心お姉さま、暗示は解けるでしょう?私の声で道標を作ってさしあげます。少しの間お話しませんこと?』

「げらげら……いいぞ」

「そんなことさせないさ!」

『黙ってくださる?私は真心お姉さまとお話してますの』


 そう言って芽織は女性の声を奪った。芽織は音遣い。零崎曲識と同じスタイルだ。だが、唯一違うのは彼女は“空気”をも操る。今芽織がやったのは女性の周りを無音にしたのだ。もちろん音も出せない。


『では真心お姉さま。少しの間ですが私の声を辿って意識を覚醒してくださいね』

「ああ……俺様に………できないことは…ない」

『頼もしいですわ。ではいきますわよ?


 目の前に扉が。貴女は扉をくぐり真っ白な部屋に出る。そこにはまた扉があって貴女はまたくぐる。同じように真っ白な部屋があってまた扉が。これを貴女は15回繰り返す。15回目には目の前に私がいる』


 これはただの暗示だ。意識を操られているなら操り返せばいい。だけど女性がどうやって操っているか知らないからすでに気絶させているが。しばらくは目覚めないだろう。


「め……い、織……」

『はい真心お姉さま。改めて、お久しぶりですわ』

「久しぶりだな」

『一つお聞かせ願えますか?私真心お姉さまは亡くなっているのだとばかり思っていたのですが……』


 芽織は申し訳なさそうに質問した。あの日、真心は芽織と戯言遣いこといーちゃんの目の前で紅蓮の炎に焼かれて死んだはずだったからだ。
 だけど、だけど。目の前にいるのは何故?
 真心は飄々という。


「俺様は一度死んだ。だがいーちゃんも芽織もいなくなっても研究は続いてたんだぞ」

『そうですの……。逃げ出してごめんなさい……。真心お姉さまがいないなんて現実、受け入れたくなかったんですの……』

「別にいいぞ。俺様は気にしてない。それより笑顔が見せてほしいぞ」

『……真心お姉さま……。お姉さまがそうおっしゃるのなら……』


 頬に伝う涙を拭いながら芽織は笑った。
 逃げ出してしまったのに。残っていたら助けだせたかもしれないのに。なのに私を責めずに笑ってくれという真心お姉さま。ごめんなさい。そして、ありがとうございます。言葉にせずに心の中で思う芽織。


「そうだぞ。話をするんだろ?いろいろ聞かせてくれ」

『よろこんで。真心お姉さま』


 精一杯の罪滅ぼしを。精一杯の笑顔を。貴方に捧げましょう。
















































 しばらく話しこんでいると後ろで女性の意識が戻ったことが分かった。そして真心の意識はすでになく、人形とかしていた、
 最後に、言葉を残そうと思った。最後まで聞いてくれなくてもいい。最後は思い残すことなく逝きたいから。


『真心お姉さま。最後にお話しできて楽しかったですわ』

「…………」

『軋識お兄さまにお会いできなかったことが心残りですがそれを除けば楽しい人生でしたわ』

「………」

『零崎に覚醒して、お兄さま方と出会って、反対を振り切ってER3に参加して、真心お姉さまといーお兄さまと出会って、日本に戻って家賊と暮らして……短いながらも自由に生きれました』

「………」

『だけど家賊が愛しい。友達が愛しい。世界が愛しい。そんなことを思う自分が滑稽で私は自分が大嫌いでしたわ。死にたいといつも思っていました』

「………」

『だけどこんな私でも好きだと言ってくださる家賊や友達。自分のためには生きれなくてもそんな家賊や友達のためなら生きようと思っていました』

「………」

『だけどそれもここで終わりですわ。ありがとう真心お姉さま。私、最後は笑って逝けるます。自分が大嫌いだった割にはいい死に方になったと思いません?』

「………」

『それではごきげんよう、真心お姉さま』



 ズプッ



 芽織は真心によって腹を貫かれた。
 最後まで待ってくれたのは女性の優しさか、それとも真心の抵抗か。
 どちらも定かではない。だが、そのことによって芽織が会いたいと願っていた人物が来る時間までに間に合った。



「芽織!!!」



 走ってくるのは芽織が愛して、会いたいと願っていた零崎軋識、その人だった。


『きし………しき?』

「大丈夫か!?」

『言葉使い、戻って……ますわ、よ?』

「しゃべるな!!早く手当てしないと!!!」


 今まで見たこともないくらい焦っている軋識。面白くてフフっと芽織は笑った。この傷と出血量からしてもう助からないことは分かり切っているはずなのに。それでも血を止めようと必死になっている。芽織は軋識の手を己の体からどけた。
 それをみて女性は何もしなかった。最後くらいは大目に見てくれるという事だろうか。女性は芽織たちに背を向け歩みを進めていった。



『いい………ですわ……』

「芽織!!手を放せ!!!」

『きし……し、き……』

「………なんだ?」


 死に際だというのに笑う芽織を見て軋識はもう何もしなかった。助からないことを認めたのだ。
 最後の言葉は聞いておこうと軋識は芽織を抱き上げた。



『あい………して、ます……。はじ、め…てであっ………たとき…から………』

「芽織…」

『こた……えはいり、ま……せん』


 そう言って芽織は軋識の唇に自分の唇を重ねた。
 そして見たこともないくらい綺麗な笑顔を浮かべた。



『あい、して……ます………き…しし………き』

「………芽織?」




 芽織は愛する人の腕の中で静かにこの世を去った。









―――――――――
・あとがき

 死ネタがやりたかったんです。初めて書きましたが。
 何となく軋識でいきました。そして人識もつけてみた。
 ………1で終わった方が良かったかもですがこれで全部です。
 読んでくださりありがとうございましたm(_ _)m

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