読書感想文って本当に必要なのだろうか。もうジャンプとか読んでそれの感想書いても別にいいんじゃないかと思う。そういえば今日はジャンプの発売日だった。
登校中に気付いて買ってから学校に向かう。するとジャンプが読みたくて読みたくて仕方が無くなってしまった。幸い今日の補習は先生が出張だかで1時間だけだったので適当に裏庭に行ってジャンプを開く。
「ギン肉マン面白いなぁ」
こんな地味な女がジャンプを読んでるなんて可笑しいだろうか。適当に活字の本でも読んどけば真面目な優等生に見えるかもしれない。だが私は補習に呼ばれるほど頭はよくない。
そもそも地味なグループに入ってしまったのは途中から転校してきたからだ。前の学校ではそれなりのグループに入っていたのだが。
第一印象が真面目だった私はすぐに地味なグループに割り振られてしまったようだ。
そよそよとジャンプを読む私に風が吹く。心地の良い風はちゃんとページを抑えていなかったジャンプのページを勝手に捲った。
「えっ!ちょっ!タンマタンマー!そのいたずらな風タンマ!」
読んでいたページが何処か忘れてしまった私は酷く声を上げた。折角ギン肉マンを読んでいたのに。
「――人がジャンプ読んでるっつーのに、うっせーなァ」
私が座っていたのとは別の後ろにあるベンチから声がした。ベンチとベンチの間に木があって気づかなかったが、もしかして先に来ていた人がいたのだろうか。
声の主を木から覗くとそこには銀髪。先日苺牛乳を私にくれたあの先生ではないだろうか。
「あれ、お前…」
「…先生知ってましたか、タンマって炭酸マグネシウムの略なんですよ」
「それ、今週のギンタマンでやってたわ」
「ついでに炭酸マグネシウムはロジンバッグの中に入ってます」
「作者の一言欄で読んだわ」
先生が読んでいたのは今週のジャンプで私と同じく買いたてのようだ。私がジャンプを先生に見せると驚いたような顔をした。
「意外って顔してます」
「だってお前…普通に意外…」
私がまさかジャンプを読むなんて思っていなかったようだ。やはり地味な奴は読んではいけないのだろうか。
「先生はジャンプも苺牛乳も似合いますね」
ジャンプの隣に置かれた苺牛乳は微かに水滴が付いていた。ついでにタバコに吸っていたがそれは見なかったことにしておこう。
そう言って少し笑って私は座り直して視線をジャンプに移す。そうそう、ギン肉マンを読まなければいけないという大切な使命が私にはあったのだ。
ペラペラとページをめくると丁度ギン肉マンが敵に攻撃を受けているシーンで、痛々しい傷はコマごとに増えていく。
「ギ、ギン肉マン・・・!頑張って…!!」
「お前はそんなとこで終わるタマじゃねェだろ…!」
ギン肉マンがボロボロの体で立ち上がって必殺技を使おうとする。そんな体で彼は無茶をするものだ。そしてここで回想シーン。
師匠の言った言葉がボロボロのギン肉マンに静かに響く。大切な物を守るために戦う彼は強く大地を踏み込んだ。
「うわあああ!!」
「ギン肉マンンンンン!」
彼が必殺技をだそうとした、するとやられた傷が痛む。だが彼は血を流しながら戦う。強い心を持った彼に誰が感動しないのだろうか。
「お前って奴は…!」
(…ちょっと待て)
さっきから私の声と誰かの声がこだましているではないか。後ろを振り返ると感動している先生の姿。まさか。
「ちょ、先生…」
「えっ此処で終わるの?マジで?来週まで待てねェよ…」
「先生、」
「まさかギン肉マンが敵の必殺技を受けてたところで終わるなんてなァ…」
「ちょっと!先生言わないでくださいよ!!まだそこまで読んでない!!!」
先生の方のベンチに回って先生の肩を思いっきり揺らす。ギン肉マンのネタバレの罪は重いぞ。私がこんなに必死だと言うのに先生は笑っていた。
「な、なんで笑ってんですか…」
「はー、面白いなお前」
そう言って先生は隣をポンポンと叩いた。私はジャンプを持ったまま首を傾げる。
「一緒に読もうぜ」
この日からジャンプ発売日に先生と二人でジャンプを読むのが習慣になった。
共通点2つ目
(連載は何が一番好きですか)
(ギン肉マン)
(一緒ですね)