君の手を引いて走れ!

□サッカー編
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玄関を開くとサッカーボールが転がっていた。また隣の家の兄弟とサッカーをしてきたのだろうか。放り投げられた靴を揃えてリビングに顔を出す。


帰ってすぐに「試合どうだった!」と弟に聞かれると私は「凄かったよ」だけ答えて買ってきたサッカー雑誌を読んだ。なんだか「次は連れてけ」と文句が聞こえてきたが気にしないでおこう。



13

次の日は朝から弟にサッカーをしようとねだられて2人で河川敷に来ていた。こうして河川敷でサッカーをするのはサッカー部兼陸上部をしていた時からして随分久しいことだった。


「鬼道さんみたいな、しれいとうになるんだ!」

「小さいのによく司令塔なんて言葉知ってるなぁ」


毎回聞く名前だがイマイチ誰か分からない。昨日の試合だってうっかり裸眼で行ってしまったから誰が誰が見えなかった。実況を頼りに試合を見たのだがなにやら実況の人もキドゥさんという人に熱弁をしていた気がする。レギュラーで出てると思われるキドゥさんは一体誰なのだろうか。


「お前はどこの中学校に入りたい?」

「帝国!」

「マジか」

ボールをポーンと蹴ってやれば必死に弟は追いかける。「キラースライド!」と言って多分帝国の技っぽいのを真似する弟にわざと吹き飛ばされる振りをしてやるとめっちゃ怒られた。


「ごめんごめん、…で、なんで帝国なの」

「強いから!」


ドーンと言い張った弟に苦笑いをする。ここまでの帝国贔屓は久しぶりに見た。というか自分の弟で帝国なんか入れるのだろうかとちょっと心配になる。


「へぇー」

「それと、鬼道さんのぼこうだから!」

「キドゥさんって今雷門にいないの?」

「いる」

「なら雷門でもよくないか」

「別にどっちでもいい」


あっそこはこだわってないんだ。円堂くんのゴットハンドを真似して凄く嬉しそうにしているのを見て突っ込む気にはなれなかった。私が疾風ダッシュを見せると反応は薄かった。(風丸くんごめん)


帝国から雷門転入してきたサッカー部のレギュラーのキドゥさんって一体どんな人なのだろうか。司令塔って言ってたし結構目立つ頭の良い人なのかな。


部活帰りと思われる円堂くんと風丸くんと河川敷で鉢合わせになると、弟は嬉しそうにサッカーボールを持って円堂くんとサッカーをしていた。(風丸くんごめん)


風丸くんに「似てるな」と言われてどこが似てるのかと聞けば、「声」とだけ帰ってきた。そんなの声変わりしたらまるで別人になってしまうんだよきっと。空を見ると夕日が少し沈んで、円堂くんのバンダナの色みたいになっていた。

















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