君の手を引いて走れ!

□サッカー編
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夜の校舎をヒタヒタと裸足で歩く。こんなに暗いとは思わず校舎内に入った自分は激しくこの事を後悔した。


学校がこんなに暗いなんて知っていればこんな週末課題なんて持って帰ろうなんて思わなかったのに。


教室から自分の課題を取って光のごとく帰ろうとすると、廊下でバッタリとサッカー部に会った。声を掛けようと右手を上げると悲鳴を上げて逃げられてしまった。


「…どういうこと」



15

その後円堂くんに袋叩きにされそうになったところを今日はマント無しのゴーグルメガネくんに捕獲してもらった。泣きながらお礼を言うと豪炎寺くんに何故か飴を貰った。


「ホントごめん!」

「呪う、円堂くん呪う」


課題を抱えた私は電気の付いた廊下で円堂くんに正座で謝罪されていた。ホントに死ぬかと思った。掴みかかってこられてそのまま押し倒されたときは頭を打ち付けて生死を彷徨う勢いだったのだ。


豪炎寺くんに貰った飴を食べながらたんこぶが出来たであろう頭を摩る。ゴーグルメガネくんが助けてくれなかったら今頃どうなっていたかと思うと少し体が冷えた。


「今日はどうして皆いるの?」


辺りを見回すとサッカー部ばかりいて私は首を傾げる。そうすると冷やす用の氷を持ってきてくれた風丸くんが「合宿なんだ」と教えてくれた。なるほど。


「今日のところは豪炎寺くんの飴に免じて許そう」


私がそう言うと円堂くんは顔を上げて喜んでくれた。ちょっと悪い気はしない。ゴーグルメガネくんと豪炎寺くんはやっと一件落着したという風な反応を見せた。お騒がせしました。


今日は皆疲れているんだと思いその場を後にしようとすると、ゴーグルメガネくんが課題を持って追いかけてきてくれた。手元には何も持っていなかったのでそれを見てやっと私が課題を忘れたのを思い出す。


「忘れ物だ」

「うわああすいませんすいません!ありがとう!」


こんな危険な目に合いながら課題を忘れて帰るとはとんだ大馬鹿者ではないだろうか。走ってきてくれたのだろうが息が切れていないところを見ると、流石選手だなと思った。


「決勝も観に来るのか」

「もちろん!皆が日本一になるの楽しみにしてるね」


昇降口にゴーグルメガネくんと私の声が響く。私が笑ってそういうとゴーグルメガネくんも少し表情が緩んだように思えた。


「――吹っ切れたようだな」


それだけ言ってゴーグルメガネくんは私に背を向けて長い階段を上っていく。私は何か反応をしないとと思って頭を働かせるが気の利いた言葉が出てこなかった。


「あ、ありがとう!」


彼は心配しててくれたのだろうか。この状況は半分言い逃げみたいになってしまったが仕方がない。私も暗くなった校舎を後にした。


影で見ていた部員にゴーグルメガネくんが少し茶化されていたのは知らないで私は帰路についた。サッカー部の皆が勝てますように。


















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