君の手を引いて走れ!

□始動編
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言いにくい、凄い言いにくい。さっきからゴーグルマントくんの方をチラチラと見ている私は完全に変な人なのだろうけど。意を決してサッカー部を掻き分けてゴーグルマントくんの元へ向かうとなんだか楽しそうな風丸くん等の視線を感じた。


実は私にはずっと言おうと決めていたことがあったのだ。折角のタイミングなのだから今聞かなくてどうする。頑張れ私。


目の前のゴーグルマントくんはかなり驚いた風な顔をしている。眉を寄せて不思議がっているので多分かなり驚いている。


私は皆の視線を感じながら口を開いた。転校してきた当初からずっと聞こうと思っていた…そう、アレを聞くために。


「あの!名前教えて貰ってもいいですか!!」



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視界の横で何人かズッコケた気がする。ドリフやひな壇芸じゃないんだから皆。ゴーグルマントくん本人も唖然としてる様子からこれは何かやらかしたと思った。


「え、と…ダメですか…」

「…俺の、か」


確認のようにゴーグルマントくんがそう言うと私は大きく頷いた。呆れたように眉間に手をやるゴーグルマントくんは「知らなかったのか」と聞いてきた。知らなかったんです。


「そういえば、なまえが呼んでるの聞いたこと無かったな…」


円堂くんも驚いたようにそう口にする。風丸くんが「鬼道も可哀想に」と少し笑いながら話してる様子、彼は聞きたいことを知っていたのではないだろうか。


「え?キドゥ?」

「…鬼道、有人だ」

「え?えっと、あなたが鬼道さん?」

「そうだが」


何度も聞いたことのある名前に私は耳を疑った。そういえばキドゥさんは帝国から雷門に転校してきたって言っていたし鬼道くんも転校生ではないだろうか。


「鬼道くん!鬼道有人くん!覚えました!改めてよろしくお願いします!!」


そう言って笑うと染岡くんやら半田くんやらに叩かれた。何が「期待させんな」だ。女の子を殴るなんて酷いサッカー部だ。そう思ってすがるように秋ちゃんに視線をやればこちらもなにやら楽しそうに笑ってるではないか。隣の音無さんは唖然としているが。


友達の第一歩として名前を聞いてみたんだけれど多分これでぐっとお友達には近づいたハズだ。勇気出してよかったと満足していると帰りのバスが来た。


「それじゃあ!お疲れ様でした!」


大きく手を振って別れを告げると皆手を振ってくれた。心無しか元気が無いように思えるが。なにはともあれ名前が知れたので良かったと思う。さっき教えてもらったばかりの名前を思い出しながらバスに乗り込んだ。

















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