君の手を引いて走れ!

□始動編
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私と会ったら皆何て言うかな。コロッとサッカーをするなんて言い出した私を嫌だと思うかな。



25

雷門中は無残に破壊されていた。中継で見たときより酷い状況で、無意識に私は下唇を噛んでいた。


携帯を取り出して監督に言われた番号に掛けると、本人が出た。「そこで待ってて」と言われて校門だった場所に寄りかかる。雷門中に入学した時にウキウキしながら通った場所は原型を止めてはいなかった。サッカー部の部室と思われるものも破壊されていて、思わず近くに寄る。


「酷い…」


しゃがんでサッカー部と書かれた木で出来た表札を拾う。久しぶりに懐かしい気持ちになった。埃を払って立ち上がると丁度良く監督が私に声をかけた。


「みょうじさん」


後ろを振り返れば知的な女性が立っている。今までの監督とはタイプが違うなと思って軽くお辞儀をする。


「私は新監督の吉良瞳子よ」

「みょうじなまえです、よろしくお願いします」

「よろしく」


そう言うと瞳子監督は先を歩いて行ってしまう。これは付いて行けということだろうか。私はカラーリングが真逆の新品のサッカーボールを抱えて後を追った。


不思議な暗い部屋に着くとそこには校長先生と理事長、それと前の監督さんが立っていた。前の監督さんが私の持っている板を見たので、私はそれを渡した。


「お前さんがみょうじか」


説明はまだかと1人でそわそわとしていると、元監督さんが話しかけてきてくれた。「初めまして、」と言ってお辞儀をすると丁寧だと笑われた。サッカー部はそんなに礼儀がなっていなかったのだろうか。


「バスが襲撃されそうになった時の事を聞いている」

「バス…?」

「お前が必殺技でボールを弾いたようじゃないか」


そこまで言われて「ああ!」と声が出た。私が今回、それを見ていた人の情報でここに呼ばれたのだと気付く。瞳子監督に肩を叩かれて「キャラバンに乗って待ってて」と言われた。


「さ、サッカー部の為にあんなバスがあるなんて…」


目線の先には鮮やかな雷門のカラーリングをしたバスがあった。最初にフットボールフロンティアを目指していた時は、まさかサッカー部のためにこんなものが用意されるなんて考えていただろうか。


言われた通りにバスに乗り込んで、誰もいない後ろの座席に荷物を置いて適当に座る。乗るときに運転手の古株さんに挨拶をすると、皆ももうすぐ集まるだろうと教えてくれた。


不思議なカラーリングのサッカーボールを抱えて、皆が来るのを静かに待った。

















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