君の手を引いて走れ!

□突撃編
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何度も何度も揺すられる。心無しか寒いような気がして手を伸ばして何かを掴むとそれを引き寄せるようにした。おっ暖かいなと思ってそのままにしていると呆れたようなため息が聞こえてきた。


寒いんだから別に「…い、」いいじゃないかと思う。「おい」それに北海道に着くまで寝てても別に誰も困らないし。そういえば北海道って寒いんだっけ。


「――みょうじ、いい加減起きてくれないか」

「…へ、」



37

私の絶叫がバスの中に響き渡り、掴んでいた鬼道くんの腕を勢いよく放り投げる。寒い、流石北海道!塔子ちゃんは通路を挟んだ隣の座席で笑っていた。可笑しいよねなんでそこにいるの。「なまえは良く寝るなぁー!」じゃないよね。なにこれ。


前の席に座っている秋ちゃんにどうしてこうなったか詰め寄ると「奈良からずっと寝っぱなしだったのよ」なんて恥ずかしいことを教えてくれた。話によると東京にも寄ったらしい。


その間鬼道くんにずっとくっついていたのかと想像すると、なんとも申し訳なくなった。気まずくて鬼道くんの方を向けないではないか。風丸くんが面白そうに笑うのが視界に入ってなんだか悔しくなった。綺麗な笑顔だなもう。


「き、鬼道くん…」


どうにでもなってしまえ、という気持ちで鬼道くんの方に向き合うと、なんだか鬼道くんも気まずいような感じになっていた。この雰囲気どうしようか。


「…何度も起こしたんだがな」

「一回寝たら中々起きれないんです…この度はとんだご迷惑を…」

「気にしてない」


鬼道くんの後ろの雲の隙間から出た太陽で私の顔に影が出来た。なんだか神々しいなと思って「写メいいですか」と聞くと携帯を折られそうになった。後ろで春奈ちゃんがこっそり写真を撮ってくれてたので後で焼き回してもらおうと思う。


バスを降りると円堂くんが、さっき凄い奴と会ったんだと教えてくれた。サッカーボールで雪の道を作ったとか言ってるので円堂くんにはもうちょっと国語の勉強をしたらどうかとアドバイスした。








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