君の手を引いて走れ!

□突撃編
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隣の席のアイツは第一印象は寝ている奴、その次は大人しそうな奴。俺が自己紹介をしていた時はもう既に寝ていたので、次の印象の理由となった外見はその後に見て、大人しそうだなと思った。


まっすぐ前を見つめる視線と、軽く結んだ唇は何故か只者じゃないなと感じた。まぁそれは当たることになるのだけど。


テンパりながら朝に挨拶をしてきたコイツを見て、酷く驚いたのが印象深い。それからは「変な奴」に変わった。



28

あの時みょうじにゆっくりと伸ばされた手に驚いた。でもそれに驚いたのは自分だけじゃなくて、手を伸ばした本人もだったようで「あ、」と小さく言うとすぐに手を引っ込めてしまった。


みょうじはもしかして俺に行って欲しくはなかったのだろうか、なんて。そこまで考えて我ながら自惚れているなと思った。


先ほど春奈に薬を渡されたときは驚いた。春奈が「なまえさん酔ってるから薬飲ませて頂戴!」と俺に言う意味が分からなかった。自分で渡せばいいのではないだろうか。


「早く早く」と言って急かす春奈に軽く返事をし、妹の頼みなら断れないなと思って疑問を持ちながらも座席を立ったのだ。


春奈は何か誤解をしているようだが、みょうじと俺はそういう間柄じゃないと思う。と言うか、思えばこの間名前を聞かれたばっかりだ。そういう、ただの隣の席の奴だとしか見ていないのだが。


特に親しいわけでもないが、少しからかっただけで過剰に反応するので面白い奴だとは思う。特別そういう風には見ていないので急にそんな風に言われても困るという話だ。


いつぞやの円堂に押し倒されていたみょうじを思い出して少しイラッとしたけれど、多分これは「もっと危機感を持て」と思っているからだと思う。つまり、春奈に思うのと同じ感じだろう。いやでも、もし春奈がそういう事になってたら円堂を殴ってしまうかもしれないな。


そう思って口元だけ少しだけ笑うと、後ろで騒いでいた円堂に不抵抗にしりとりに混ぜられた。「りんご!はい、次鬼道だぞ!」と元気よく言って俺に回してくる円堂に「リンカーン」とだけ答えると円堂は崩れ落ちた。


どこかで見たことある光景だなと思っているとみょうじとしりとりをしたときのことを思い出して「ああ」と思った。


















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