「――でね、久しぶりに皆で遊園地に行ったの」
「良かったねなまえちゃん!ずっと3人で出かけたいって話してたじゃない」
「秋ちゃんありがとうー!」
昼下がり、私は木枯し荘にお邪魔して学生時代の友人の秋ちゃんとお茶会をしていた。先日の遊園地の話をすると嬉しそうに聞いてくれて、流石秋ちゃんだなぁと思った。
ちなみにみおちゃんは今の時間は保育園でお昼寝をしていると思う。一郎太は今度は1週間と短い期間で帰ってくると言ってつい2、3日前に家を後にした。
「なんだか凄い幸せそうね」
「お陰様で!これも秋ちゃんのおかげなんだよなぁ」
恥ずかしい話、雷門中学に通っている時はサッカー部のマネージャーである秋ちゃんに恋愛相談をしていた。告白を促してくれたのも秋ちゃんなので、彼女がいなかったら今こうして幸せに暮らしているのかも不思議だ。(告白は結局向こうからされたのだが)
「今度はみおちゃんも連れて来てね」
「あの子秋ちゃんのクッキー大好きなの。今日も内緒で来ちゃったんだけど、怒られるかなぁ」
「ふふ、手土産にどうぞ」
「流石秋ちゃん」
いい匂いのクッキーをカバンに閉まって、我が子がこんなに大きくなったと写真を見せていると犬の吠える声が聞こえた。玄関にいるサスケくんが吠えているのだろうか。珍しい。
「あれ、今日は帰ってくるの早いわね…」
「小暮くん?」
「ううん、もっと小さい方よ」
元気な「ただいまー!」という声が玄関に響いた。「お邪魔します」と何人か言っているが随分賑やかな団体様だ。秋ちゃんが玄関の方に向かっていったので好奇心で付いて行ってみる。
「おかえりなさい」
「秋姉ただいま!今日は友達を連れてきたんだ!」
秋ちゃんの後ろからひょっこりと顔を出してみると懐かしい制服を着た中学生達がいた。すると秋ちゃんのことを「秋姉」と呼んでいた特徴的な髪型の男の子と目が合った。
「えっと…秋姉、お客さん?」
「初めまして、なまえです」
「あっ初めまして松風天馬です!」
近づくと天馬くんは急に肩に力が入って硬くなってしまった。サッカーボールを抱えている辺りがオレンジのバンダナの誰かさんを想像させる。「よろしく」と言って頭を撫でると照れくさそうに笑った。
「なまえちゃんとはお友達なの」
秋ちゃんがそう言うと「へぇ!」と周りの子達も私に注目した。とりあえず笑っておこう。外を見ると少し日が傾いてきた。
「秋ちゃん、長居しちゃってごめんね」
「いいのよ、気にしないで。またいつでも連絡してね」
木枯らし荘の前で見送ってくれた秋ちゃんに手を振ってみおちゃんの保育園の迎えに向かった。秋ちゃんのクッキーの匂いを纏っていたらしくみおちゃんには少し怒られてしまったが、クッキーを出してなんとか期限を取り戻してもらった。
2人だけでお茶会