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□正しい君の抱きしめ方
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夏が始まりそうです。もう夜中なのに蒸し暑い外とは打って変わって冷房がガンガン効いた店内はガランとしていた。


それもそのはず、こんな市街地から離れたコンビニに足を運ぶ人なんて滅多にいない。学生が学校帰りに寄るくらいだろうか。それと近くにマンションがあるからそこの人とか。


チラリとカレンダーを見ると、何回目を擦っても日付をまたいだ今日は6月20日。静かで涼しいコンビニの中で、私は密かに19歳の誕生日を迎えた。



赤い君に奪われて

在庫の確認でもしようかと奥に行こうとすると陽気な音楽が鳴った。これはお客様が来た合図だ。私は方向転換して「いらっしゃいませー」と笑顔を作って入口の方へ言う。


こんな時間に珍しい。この前みたいな酔っ払いじゃなきゃいいのだけど。散々絡まれて大変だった苦い思い出がある。ここのコンビニは変な人がたくさん来るからなあ。


店内に入ってきたのは赤い髪の学生。雑誌のコーナーの前でなにやら探しているようだ。横目で見た限りかなりの美青年だった。


「(初めて見た)」


この時間のシフトは最近回して貰ったばっかりだったので(深夜は時給が高いから)彼のことは初めて見た。もしかしてバイトの女の子が私と代わるのを渋っていたのは、こんな時間に来店する彼が理由なのかもしれない。


なんだか気難しそうな雑誌と飲料水を数本持ってレジの前に来たので、私は疾風レジ打ちで華麗に会計を済ませる。伊達に3年もコンビニ定員をやっていない。


余談ではあるが、私は学生時代からバイトをしていてこの前の春に正社員として雇ってもらうことになった。店長はこんな厳しい営業の中でよく私を雇ってくれたなあ、といつも感謝しています。ありがとう。


「120円のお返しですー」


差し出された手は不健康そうな色。この子ちゃんと食べてるのだろうか?その割には大きな手のひらにそっと百円玉と十円玉2枚を乗せる。


一瞬目が合ってなんだなんだと思ったが、とりあえず営業スマイルを返しておく。うちでは笑顔0円はやっておりませんよ。


美青年も笑顔を返してくれた。笑うと意外と可愛いじゃないですか。ちょっとお姉さんときめいた。


「ありがとうございました」


そう言って小さくなっていく背中を見送る。今日はラッキーだったなあと思って少し口元が緩んだ。ふあ、とあくびが出る。


流石にこの時間帯は少し眠いのでやっぱり前みたいに夕方のシフトにしようと心に決めた。









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