シリーズ

□正しい君の抱きしめ方
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いつも通りに夕方にシフトに入る。この前がたまたま深夜だっただけで本来ならばこの時間が私の定位置。


夕方なのにあまり混まないコンビニ店内を少しウロウロしながら雑誌を変えていると陽気な音楽が鳴った。


「いらっしゃいませー」



不思議な関係図


緑の2つの瞳が私の方をじっと見つめる。そろそろ穴が飽きそうなんだけれども。なんだか良くない汗が流れて私は赤髪の彼の方を向くことが出来ない。


「え、と…」

「この時間だったんですね」

「前は臨時で入っただけだったので…」


美青年に見つめられるなんて経験、学生時代にあっただろうか。この状況を高校の友達が見たら発狂してしまうかもしれない。彼女は美青年好きだったなぁ。


「あれから大丈夫でした?」

「あっはい!あの時はすみません」

「逆に、うちの学校の生徒がご迷惑をお掛けして…」

「いいんですいいんです」


大人っぽい対応に戸惑っているとそんな私の考えていることが分かったのか、彼は優しく笑った。


私は何かお礼をしなければと悶々と考えていた。なにか…ないだろうか…。あ!


「あ、ちょっと待っててください」

「え?」


彼がきょとんとしている間に急いで大型冷凍庫を開けてアイスを持ってくる。


「これ、お礼です」

「でも…」

「私の奢りなんで安心してください」


安いアイスなのは私のお金がないからだ。私が後で払えば大丈夫だろうと思って、そのままレジ袋の中にアイスを入れた。


「すみません、…えっと…、良かったら名前教えていただけますか」


チラリと私のネームカードを見る彼にきょとんとする。苗字書いてあるじゃないのこれ。


「…?、みょうじです」

「知ってますよ、下の名前が知りたいんです」

「なまえです」

「なまえさん、」


復唱するように小さく私の名前を言う彼に少しどきっとしてしまった。私としたことが、彼は年下じゃないか。


「俺、ヒロトって言います」

「はい、ヒロトくん」


正面を向くと少し嬉しそうな彼と目が合った。こうやって合わせるのはまだ緊張してしまうけど笑顔を作ってごまかした。


「また来ます」


この時は社交辞令だろうなと思っていた。まさか本当にこの時間帯に毎回来るようになるなんて、一体誰が想像しただろうか。まぁ私しか想像出来る人はいないけど。








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