夜。また君が私の部屋の窓を叩く。
「おはよ。起きてるー?」
「うん。今起きたところ」
私の朝は暗くなってから。
臨也が私を日中外に出さないようにしてくれた。
私はXP患者である。すなわち色素性乾皮症で、紫外線を受けると皮膚が火傷したみたいになるのだ。
私はどうしても入院生活が嫌で、病院を飛び出してきたところを臨也に拾われた。
「今日はお仕事これから?」
「君の為にもう終わらせて来たんだよね」
そう言って臨也はソファーに沈むように座る。
臨也は忙しい合間を縫って私に会いに来てくれる。
(申し訳ないからと断ると「つまんなくなるから無理」と言ってくるので甘えて会いに来てもらっている)
「本当は自分家の方がずっと一緒にいれるからいいんだけどね。でも、そしたら君に変なの付いちゃうから駄目」
コーヒーを飲みながら臨也は退屈そうにそう言う。
「変なのって?」
私は少し笑って問う。
「僕にとっては君に日光よりも触れて欲しくないもの、かな」
臨也はまだコーヒーの入っているカップを置いて、私の手を取る。
「君はなんでこんなに白くて綺麗なんだろうね。染めたいくらいだよ」
「もう染まってるじゃない?」
月明かりを浴びて、臨也の髪がキラキラと反射して眩しい。
臨也は私が何をいいたいか分かったらしく、笑った。
「そうだね。もう、俺色に色付いちゃったか」
嬉しそうな臨也と目が合って、私も微笑んだ。
「キザだね」
この時間を永久のモノに。 (私はこの時間だけ)(お姫様になれる)