もしも、私がロギア系の悪魔の実を食べず、武道の王の1人娘じゃなかったら?
もしも、貴方がごく普通で幸せな家庭に生まれて海賊を嫌っていたら?
「エース」
「ん、なんだ?」
私は手首をあげるとジャラっと鎖の音がした。
「後どれくらい此処にいればいいの?」
「助けが来るまで、だろ」
エースはそう言うとため息を付いて壁にもたれかかった。
正直私はもう限界である。
閉所恐怖症で、こんな狭い牢屋、否、こんな狭い船にいるのはもうやめたい。
「…大丈夫か?」
「…いや、もう全然平気…」
そう言って床に倒れ込むようにして私は沈む。
エースはいきなり倒れ込んだので吃驚したようで、私の名前を叫んだ。
私はエースの名前を静かに呼んで、「大丈夫」とだけ言った。
そして私はゆっくり目を閉じる。
どれくらい閉じていたのだろうか、大きな爆発音が聞こえて目を開けた。
「…遅い…」
「申し訳ないよい。少し遠かったのさ」
目の前にはマルコが立っていた。
(助けに来てくれたのだろう)
手錠のカギをエースに向かって投げ、檻を粉々に砕く。
手錠を外すと、重かった身体がウソのように楽になった。
エースはこれくらいの辛抱は余裕だったようで、私をかついで颯爽と外に出る。
「エース…熱いわ…」
「わりぃ!!」
エースが敵を倒す度に私に火が飛んでくるので熱くてたまらない。
(私もロギアだけど今能力を使うほど元気でもないのよね)
エースの肩からは下ろして貰い、先にマルコと一緒に船に帰ることになった。
「…エースは元気ねぇ」
「いいとこ見せたいんじゃないのかい?…まぁお前は打って変わってぐったりだな…」
能力すら使う気にならない私を見て笑うマルコにひと睨み聞かせて先を歩く。
「あ、エースには今回の事言ってないよな?」
「わざと捕まった事は言ってないわ。…なんで?」
「アイツお前のことになると鬼の様に怒るんだよい…」
「…へぇ…」
君と私はお互いで惹かれあってるの (たとえば、私がロギア系の悪魔の実を食べず、武道の王の1人娘じゃなかったら)
(たとえば、貴方がごく普通で幸せな家庭に生まれて海賊を嫌っていたら)
(たとえそうであっても)(貴方と私はきっと巡り会って恋に落ちる運命)