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□ハマったら最後
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「…仁王?何、どうしたのいきなり」



 俺は目の前のコイツの手を掴んで離さない。コイツは驚いたような顔をしてこっちをずっと見ている。


 その、青い目で。


でも、コイツよりも俺の方が自分の行動に心底驚いている。
 

(こんなつもりじゃなかった)




「……お前さんが、逃げそうじゃったから」

 我ながら苦しい言い訳。(これじゃあペテン師の名が泣く)


 でも、半分本当。すぐどこかに行ってしまうから、少しでも俺の近くに置いておきたいのだ。


(あぁ)(なんて自己中心的な思考なんだろうか)




「逃げようと思ってないよ」



 そう言ってさっきまで座っていた椅子に座りなおす。

その姿を申し訳ないような、でも、うれしいような感情に1人で浸る。



「…行かんの?」

「うん。やっぱ行かない」


 笑いながら目線を下に向けるコイツには彼氏がいる。名前は…なんだったか…顔は、普通でどこにでもいるような奴だった気がする。


 コイツはあまりそういう奴はタイプではないと思っていたから(自身も俺と同じような雰囲気だし)最初は信じられなかった。



 俺とコイツだけしかいない教室。

 空はさっきより紅くなっていく。

 


俺達の距離は近くなっていく



(…なんてな)


瞬きをする度にこの空間が夢じゃないのだろうかと思う。

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