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□それでも何時かは思い出
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 秋。横の窓から外を見ると雨が強く降っている。

 今日は台風だろうか。
 


 ごめんと言いながら去って行った彼の温もりを求めるようにさっきまで彼が座っていた椅子に腰掛ける。




「最悪…」


(こんなはずではなかったのに)


 多分最初から別れようと思って付き合っている人はいないと思うから、こんなことを思ってるのは私だけではないと思う。



 私は好きな人と付き合うということが初めてで、いわゆる白石は私の初めて。



 最近は2人とも関係が不安定だったから、別れるのも仕方ないかもしれない。

(否、仕方ないのかは私には分からない)



 悔しい。今になって「もっと素直になればよかった」「もう少し優しく出来たんじゃないのか」だなんて思う。


(いわゆる後悔)




 私以外誰もいなくなった教室を見回す。


なんて狭い部屋だろうか。この大きさじゃ私の気持ちが溢れて外に出てしまう。



 今にでも溢れそうな涙が私の目に溜まる。




(泣いたら)(駄目)


 我慢すればするほど胸の辺りが苦しくなる。どうしようと考えてる間に机の上にポタリと小さな水溜りが出来た。

 それを、なんだろうかと指で触れるととめどなくしずくが落ちてきた。
それが自分の涙だと気づくと私は声を出して泣いた。




 今日は雨だから外には聞こえない。




(今日だけ)




 自分のどこにこんなに水分があったのだろうかと不思議になるくらい泣いた。


 声が枯れるくらい声を出した。

誰も見てない。見てるはずがない。






Luft Garten



(空中楽園)


(そう)(明日になれば全部忘れる)


そして私は明日を待つ。

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