中編寄せ集め

□手が好き
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昼休みの静かな図書室の窓から見えるのは生徒達が賑やかに校庭を遊びまわっている様子。


ガラス一枚あるだけでこんなに別世界のように感じるのは、此処の生徒は賑やかで元気の良い人ばかりだということだろうか。


利用者が少ない割には広い図書室はたまに自習しに来る受験生がいるくらいだ。大体は私がこの静かな空気とこっそり設備されているエアコンを独占している。


カウンターで本を開く私は図書委員会の1人だ。幽霊委員が沢山いるこの委員会は仕事が成り立たない。私は結局3年間図書委員を引き受けてしまい、3年の今現在は今年無欠席でこの席に座っている。


本がとてつもなく大好きな文学少女と言うワケでもない。寧ろ活字は苦手だ。私はただ好きなのだ、この空間が。


それにクーラーが効いてる部屋なんて此処と特別教室くらいしかないのではないだろうか。


(こっちの方が本音だったりもする)



ぼーっと特に読んでもいない本に目を通す。実はあまりこれには集中できていない。


チラリと目線を移すと同じ学年の男子生徒の姿が目に入る。彼はたまに自習しにくる受験生の人。最近よく見るようになったが、ただ30分程度勉強してそれでおしまいだ。



比較的カウンターから近くの場所をいつも使う彼の、シャーペンを握る綺麗な手を眺める。


男の人らしいゴツゴツした手。でも意外と長く細い指。大きな手のひらに包まれたペンは小さく見える。


ところどころマメがあるその手は、彼が高校三年間でどのような部活動を送ってきているのかが分かる。



(綺麗な、手)



その手を本の合間から覗くように見つめる。一定の動作を繰り返して、たまに止まって。また動き出す。爪の形も好きだ。


あの手に触れてみたいと思うし、あの手で触れられたいと思う。そう考えると私の中の何かが満たされていく。はて、私は手フェチだったんだろうか。


利き手じゃない手が英単語を滑るように追いかける。その綺麗な手でそっとなぞって折り返した。



私があんな動作をしても大したことはないのだろうが、あの手は特別だ。




こんな感じで、B組の図書委員会の穏やかな時間は侵食されていく。


私は、あの手が好きだ。




教科書を捲る手







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